「水の王子」通信(174) 2023年04月23日(日) ミーハー精神 「水の王子 空へ」第十三回 【灰色の町】 「なるほど、タカヒメさまのおっしゃった通りだ。ここは気分がいいですなあ」タケミカヅチは目を細めた。 彼らは今日もツクヨミの店の外におかれた、いくつもの食卓の一つでくつろいでい… [続きを読む]
「水の王子」通信(173) 2023年04月22日(土) ミーハー精神 「水の王子 空へ」第十二回 【謎の女】 タカマガハラの船のへさきに立っている、女将軍アワヒメの白い服のすらりとした姿を見て、タカヒメははあっと息を吸いこんで目を細めた。金色がかった長い豊かな髪を肩にうねらせ、空をながめ… [続きを読む]
「水の王子」通信(172) 2023年04月17日(月) ミーハー精神 「水の王子 空へ」第十一回 【タカヒメは今日も元気】 最近ツクヨミの店は客がふえたのもあって、店の外にも食卓と椅子をおくようになっている。 冬の間はさすがに使う者はいないが、少し暖かくなった今は、花の咲く墓地や、眼下… [続きを読む]
「水の王子」通信(171) 2023年04月14日(金) ミーハー精神 「水の王子 空へ」第十回 【華やかなさざめき】 ホスセリのむずかる声とコノハナサクヤの笑い声でニニギは目をさました。寝返りをうって、へやの中を見回したが誰もいない。 そう言えばタカヒコネは朝の治療をさぼったらスクナビ… [続きを読む]
「水の王子」通信(170) 2023年04月13日(木) ミーハー精神 「水の王子 空へ」第九回 【弱音の効用】 霧がうすらいで来たのだろうか。月が少し明るくなってきた。ゆるやかによせる波の白いしぶきも見えてきた。 「私は何しろ、ずっと山の上にいたからなあ」コトシロヌシがため息をついた。… [続きを読む]
「水の王子」通信(169) 2023年04月08日(土) ミーハー精神 「水の王子 空へ」第八回 【その真の目的は】 その夜の月は妙に銀色がかっていた。タケミナカタがきげんよく、ほろよい加減で、タカヒコ兄妹を連れて船に戻って行くのを見送って、ツクヨミの店を出たあと、コトシロヌシとニニギと… [続きを読む]
「水の王子」通信(168) 2023年04月07日(金) ミーハー精神 「水の王子 空へ」第七回 【嫌われてしまったら】 「彼を嫌っていた人は、船の中にはいなかったんですか?」コトシロヌシが聞いた。 「いや、そこそこはいましたよ」タケミカヅチは苦笑した。「どうもあの方は、皆に好かれている… [続きを読む]
「水の王子」通信(167) 2023年04月07日(金) ミーハー精神 「水の王子 空へ」第六回 【真の支配者】 「あのですなあ。そこがですなあ」タケミカヅチは少しひげののびたあごをさすった。「どうも何とも言えんところでして」 「どういうことだい?」 「私はただの将軍付きの副官の武人で… [続きを読む]
「水の王子」通信(166) 2023年04月05日(水) ミーハー精神 「水の王子 空へ」第五回 【蛇と少年】 その日は店はすいていた。陽当りのいい一角の卓を囲んで若者たちはタケミカヅチの話に耳をかたむけていた。オオクニヌシとスセリの家で飼われている、リスともイタチともつかない、しまもよう… [続きを読む]
「水の王子」通信(165) 2023年04月04日(火) ミーハー精神 「水の王子 空へ」第四回 【彼は名前を覚えたのか?】 若者たちはタケミカヅチのために、新しく料理と酒を注文した。「特別サービスだってさ」と言いながらイワナガヒメが持って来た、イナヒの足(に見せかけた練り物)が入った大鉢… [続きを読む]
「水の王子」通信(164) 2023年04月03日(月) ミーハー精神 「水の王子 空へ」第三回 【最初の戦闘】 「将軍によって運不運というようなものがありましてな」タケミカヅチは言った。「ワカヒコさまが乗船されて、まだ船の全部も見て回らない内、本当に数日後に、いきなり大きな戦いに我々はま… [続きを読む]
「水の王子」通信(163) 2023年04月01日(土) ミーハー精神 「水の王子 空へ」第二回 【最初の出会いは】 「何なんだ、いったい、こいつは」タケミカヅチは太い腕を台につき、厚い手のひらで顔をぐいっとなでた。「ええ、私はたくさんの将軍にお仕えしました。皆、偉大な方々でした。もちろん… [続きを読む]
「水の王子」通信(162) 2023年03月27日(月) ミーハー精神 「水の王子 空へ」第一回 「水の王子」の続編というか副編というかの「山が」に続く新シリーズは、タケミカヅチが語り手で、アメノワカヒコが主人公の「空へ」です。 ここにあげる挿絵は皆、「村に」の電子書籍の挿絵集で紹介した… [続きを読む]
「水の王子」通信(161) 2023年03月24日(金) ミーハー精神 「水の王子 山が」余談 第三話「それぞれの愛」(5) 【タカヒコネの独白】 ニニギは鋭いほうじゃない。そこがいい。だから、つっこんで来なかった。それがわかって、おれも話した。 本当はオオクニヌシは、あのときのおれの嘘… [続きを読む]
「水の王子」通信(160) 2023年03月23日(木) ミーハー精神 「水の王子 山が」余談 第三話「それぞれの愛」(4) 【ニニギの独白】 タカヒコネがいつからオオクニヌシのことを「父さん」と呼ぶようになっていたのか、私たちの誰もが気づかなかったのは笑止だ。特に人前でそう呼ぶのをさけて… [続きを読む]