水の王子・「川も」14 2024年03月17日(日) ミーハー精神 第八章 商人の宿 それ以後、屋敷でヒルコとハヤオは、時々その若者としゃべるようになった。屋敷の空気はのんびりしていて、下働きの者たちもひまそうにしていることが多く、庭先で家具を修理していたり、廊下で床をみがいていたりする… [続きを読む]
水の王子・「川も」13 2024年03月16日(土) ミーハー精神 第七章 動く川 「よう、坊やたち!」 声をかけられてふり向くと、のんきな顔の若い男が川辺に腰を下ろして魚を釣っているのだった。ハヤオとヒルコは屋敷に夕食に行く途中で、まだ早かったから、ゆっくりと歩いていた。 男の顔に… [続きを読む]
水の王子・「川も」12 2024年03月09日(土) ミーハー精神 「ツマツの死んだお父さんは、備えておけ、って言うのが口ぐせだったらしいな」ハヤオは歩きつづけながら言った。「いつ誰が突然やってきても、すぐ迎えられるように、そして旅立てるように。でも、あの子たちの様子は何かそういう心がけ… [続きを読む]
水の王子・「川も」10 2024年03月07日(木) ミーハー精神 ※ その夜も遅くにふと目をさますと、ツマツとモモソが低い声で楽しそうに寝床の中で何かしゃべっており、ヒルコはハヤオのすぐ横で、世にも幸せそうにぐっすり眠りこけていた。 なぜかその夜は、ハヤオはとりわけ目がさ… [続きを読む]
水の王子・「川も」9 2024年03月07日(木) ミーハー精神 第五章 夜の声 ハヤオの胸のむしゃくしゃは、それから何日たっても一向に治まらなかった。 かりそめにも、どんなかたちででも、好きだと言ってもらったのだから、ちょっとぐらいはうれしくてもいいはずだと思うのに、なぜだかちっと… [続きを読む]
水の王子・「川も」11 2024年03月07日(木) ミーハー精神 第六章 村の子どもたち 季節は秋から冬に移り、村のあちこちに今度は深い紅色の花が咲き乱れた。乾かしてつぶして粉にして餅にしたらおいしいのだと、子どもたちは教えてくれた。彼らがヒルコとハヤオにつきまとうのは、屋敷の客だとい… [続きを読む]
水の王子・「川も」8 2024年03月04日(月) ミーハー精神 ※ ヒルコが何をどう予想していたか知らないが、多分それよりずっと話はかんたんだった。屋敷の主人夫婦は今夜から二人がツマツの家に泊まることにしたと聞いて、残念がったが怒らなかったし、特に引きとめもしなかった。ツマ… [続きを読む]
水の王子・「川も」7 2024年03月02日(土) ミーハー精神 ※ ヒルコが猛烈に怒っているのか、ただ単に面白がっているのかは判断つかなかったから、ハヤオはとりあえず、わら束をたばねる仕事に集中することにした。手を動かして単純作業をしていればいいから、いろいろ考えてみる時… [続きを読む]
水の王子・「川も」6 2024年03月02日(土) ミーハー精神 第四章 とってもかわいい女の子 翌朝もいい天気で、出してもらった朝食もおいしかった。薄紫の細かい花びらを散らしたような銀色がかったかゆが、とりわけ味がよく、ヒルコとハヤオがそう言ってほめると、主人夫婦は満足そうに、「君た… [続きを読む]
水の王子・「川も」5 2024年03月01日(金) ミーハー精神 第三章 一番強いのは誰? 「あら、そう? あたしに言わせれば、二人はとても似ていると思うけど」と言って笑ったのは、ニニギの妻のコノハナサクヤだ。どこかはかない危うげな華やかさがあって、村一番の美女と評判が高い。その一方で… [続きを読む]
水の王子・「川も」4 2024年02月29日(木) ミーハー精神 第二章 これまでのこと ヒルコとハヤオは、どちらも十歳か十一歳ぐらいの少年だ。空の上の世界タカマガハラから、イザナギとイザナミ男女二人の神が地上に下りて、この世界を作ったとき、最初と最後に生まれた子だ。 ヒルコはまだ… [続きを読む]
水の王子・「川も」3 2024年02月28日(水) ミーハー精神 ※ ヒルコは「そうだね」と言って、またふとんの中にすべりこんだ。「あのね、キノマタが作ろうとした宮殿は結局しあがらなかったし、見たわけでもないけどさ、何だかこのお屋敷に似てると思わない?」 「見たことないも… [続きを読む]
水の王子・「川も」2 2024年02月28日(水) ミーハー精神 ※ 「めええええ」ハヤオはヒルコにからみつきながら、小声で山羊の鳴きまねをした。 ヒルコは笑って押し返しながら、ささやいた。「まあまあだったね」 「まあまあだって? 上々すぎるじゃないか。夕ごはんをごちそ… [続きを読む]
水の王子・「川も」1 2024年02月26日(月) ミーハー精神 第一章 今夜の宿は 峠の上でハヤオとヒルコはひと休みした。秋晴れのいい天気だった。背後には高く山がそびえ、眼下には色づいた木々が重なっていた。谷の底には村が見えた。昨日二人が旅立って来たと同じぐらいの小さな村だった。 … [続きを読む]
「湖よ」のネタばらし(水の王子覚書21) 2024年02月23日(金) ミーハー精神 というか、制作過程みたいなもん(笑)。 「村に」以後、ナカツクニの村を舞台にしたシリーズをいくつか書いていて、いつからか、この村の滅亡と登場人物たちの最期を書きたい誘惑にかられはじめて困りました。 何かもう、涙なしで… [続きを読む]