福岡教育大学物語51-教職大学院

組合の先生から、いろんな資料をいただいているのですが、自分の専門研究以外のことでは、とことんいいかげんな私のこととて、それをじっくり読む体力も気力もなかなか見つからないので、その資料の助けを借りながら、あいかわらず適当な話をします。いただいた詳しい資料を十分使ってないではないかと、組合の先生、がっかりされないで下さい。わかる範囲から、ちびちび行きますので。

前回までのまとめというか、種明かしで、私が当面福岡教育大学で、一番気になるのは、昇任・採用の人事、給与の配分、懲罰・処分の三つがどことなく不透明になっていることだと言いました。

ひとつずつを詳しくいっぺんに書くと話がとっちらかるので、全部について少しずつ書いて行ってみます。
そもそも、大抵の大学では、いや一般の企業でも、この三つのしくみは、そんなにちがわない気がするのですが、どうなんですかね。

前にも書きましたが、採用や昇任にあたっては、その人を募集する講座で、ものすごく慎重に私たちは審査していました。時には何十人の応募者があっても、そのすべての業績の中から、一番専門に近い人がいくつかの論文を選び、すべての応募者について、講座の全員がそれを読んで意見を戦わせました。最後に無記名で投票しました。講座で決まったら、関連する他の講座の先生に頼んで委員になってもらい、事務職員も立ち会って、講座が推薦するかたちで、その委員会で議論し投票しました。最後に教授会に報告して、履歴書や業績表を回覧し(ひょっとして業績そのものも回覧してたっけ?)、質疑応答して、投票していました。

大学の後輩で、すごく優秀なのに、いろんなところに応募して落とされた人が、「業績の入った封筒の封も切らないで送り返された」と嘆いていたこともあり、大学によって差はあるでしょうが、私が在籍した三つほどの大学ではすべて、このようにして採用や昇任は決めていました。今でも覚えているけれど、すごくまじめで細かい同僚は(石橋をたたいて渡らない性格と、自分で言ってましたね)、教授からの推薦状とか、その他審査に直接は使わないいろんな書類でも、全部封を切って便箋を伸ばして、「本人に送り返すんだから、読んだとわかるようにしておかなくちゃ」と言っていました。もちろん目も通しました。

今は、そうじゃないようです。組織改編で講座がなくなったため、採用や昇任を提案する母体が消えました。じゃ誰がやっているのかって、よくわからないのですが、どうも学長の選んだ人たちがやっているようで、専門分野のチェックがどこまでなされているのかわかりません。
驚いたのは、教授会での投票もなくなっているようです。まったく何なん、それ。

最初に責任を持ってスタートさせる講座がなくなった。最後に責任を持って承認する教授会全体での投票がない。私の感覚からすると、恐いなんてもんじゃありません。

次に懲罰・処分について。これはまあ、アカデミックハラスメント、セクシャルハラスメント、論文の盗作などの不正、最近では授業中に学生にシュプレヒコールの練習をさせたというのでマスコミでも話題になった林崎先生のことなどがあります。最後のはちょっと珍しい例ですが、そのことに対するさまざまな意見は別にして、処分の手続きなどは、ご本人も指摘しておられるような問題もあります。これは、昔のやり方だったら、もう少しちがっていたかもしれません。少なくとも、そんなに早急な処分は出していないと思います。調査や検討は慎重で、かなり時間もかけました。

こういう、処分や懲戒のためのハラスメントの調査委員会は私も何度かやりました。人事委員長と人権教育推進委員長を両方やってたときで、どっちの仕事だったか忘れましたけど(おいおい)、多分、人権教育推進委員会の方の仕事だったでしょうね。訴えられた先生を初め、学生や他の先生に聞き取りをする、しんどい神経使う仕事でしたが、これって当然秘密裡に行われるから、そのころからまあ不透明と言えば不透明です。訴えられた先生の名前も多分最後まで教授会には出なかった。ただ、そういう報告はされました。

ちなみに私は当時、「人事も人権も、しゃべっちゃいけないことばかりの委員会で、私のようなおしゃべりにはまったく向いてない」とぼやきまくってましたからね。優秀な事務職員の方も一度言っておられましたが、この手の仕事や会議は何時間かけても、やってることが内緒ですから、働いてるのが見えないんですよ、他の人の目には。

当時は、こういう委員会は、毎年か隔年か、いろいろですけど、とにかく各講座から委員が選ばれ、その中で委員同士が委員長を選んでいました。だから、まあ数年ごとにそういう懲罰や処分を調査報告して事実上決定する人は交代していたし、誰がなる可能性もありました。

その後法人化のあとの、組織の改編の中で、この仕事をどの委員会がやるかについては、いろいろ変更がありました。で、どこがやるのか誰が選ぶのか何度か変わったようですが、途中をすっとばして現状を言うと、すべて担当するのは学長が指名した人です。
恐いやろ、普通に? 学長がいい人とか信頼できる人とかいうことと関係ないですよね、これは。まず固定化するのが恐い。最高の権力を握ってる人の指名というのが、もっと恐い。

くりかえし言うときますが、こうなったのは、学長や執行部の意図的な遠大な陰謀の構想にもとづいたんじゃないです。きっぱり言い切っていいのかと言われそうですが、まずまちがいはないです。組織をあれこれいじっている間に、いつの間にかこうなっちゃったのですよ、きっと。
ただ、その過程において、一番権力のある人の力はなるだけ分散させ、特に教職員の運命に係るようなおおごとには、十分なチェック機能をつけとけ、という発想はなかったというなら、それはその通りだし、そこは、いまだに「学長は人格高潔な人がなるはずだから、セクハラ・アカハラ規程はない」とマジで言い切っちゃう姿勢と、一貫してるっちゃあ、そうですけどね。

最後に給与の件。これもいろいろあるのですが、当面一番不透明なのは、正規の給与以外の特別手当みたいなものです。これは私のいたころは、回り持ちで講座に配分されていました。そして講座では、これまた各人に順番に回していました。
これが、外部から来た理事さんだか監事さんだかにチェックされたらしいのですね。気持ちはわかりますよ。「勤勉手当とか特別手当とかいうからには、ちゃんと特別に勤勉な人に与えるべきなのに、回り持ちとは何事だ。趣旨がちがうじゃないか!」って、絶対よそから来てがんばろうと張り切ってる人は言いたくなるだろうと思います。

だけど、問題は、これまたゆっくり話しますが、大学の教員の評価やランク付けなんて、結論から言うと、できるわけないんですよ。むしろ、「これはそういうんじゃなくて、たまたま少しは余裕がある分を、全員には行き渡らないから、順々にもらえるようにしてるんだ」と説明して、それに合致した名目に変える工夫をする方が簡単じゃなかったんだろうか。

それをその、張り切った理事さんだか監事さんだかの正論っちゃあ正論に圧倒されて、「なるほど、じゃ何か理由をつけて」みたいなことにした結果、たとえば、大学のホームページの自分の欄の記載に不備があった人にはあげない、とか、しょうもないチェックで勤勉度をはかったりするようになった。ちなみに私の知っている研究教育両方に秀でた先生が、これでもらえるはずの特別給与をもらえなかったとき、私は怒り狂って、名誉教授を返納すると騒いだ記憶があります。ほんとに、あんまりひどいと思った。何ですかそのろくでもない形式主義は。

で、今はどうなってるかというと、各自がものすごく詳しい何十項目もある自己評価シートというのを提出するんだって。自分の教育や研究や社会貢献度や学内運営にABCのランクをつけて記述し、その結果で特別給与を配分することになってるらしい。なんかもう、アホらしすぎて涙が出る、とか言っちゃいけませんかしら。
自己評価ですよ。チェックもしようがない。形式主義の自己満足。それでなくても忙しい教員と事務職員の仕事を増やすだけ。抵抗して提出しない先生は、もちろん永遠に特別手当はもらえない。私に自分のを見せてくれた先生は、いっぱいAをつけて出して見てるけど、この十年ぐらい、一度ももらえていないって。

もちろん、誰がもらったかわかりません。極端な話、同じ人が十年間もらい続けたってわからないんじゃないのかな。
ちなみに昔あった各種委員会の中でも仕事が多くて責任も重いのは、学生、教育、人事、予算、などですが、私は予算委員会だけはいっぺんも選ばれませんでした(笑)。さすがは皆さん、人を見る目がおありで。
でも、その予算委員会も今はなくなっているそうです。だから、こういう手当の配分もどこでどうして決められているのか、多分誰にもわからない。

三権分立ががたがたに崩れつつある日本の未来を見るようです。

タイトルの「教職大学院」はどうなった、と言われそうですが、実は、この三つの中の、人事と給与に、教職大学院の存在がものすごく影響してるんですよ。

人事がこれまでの手続きを踏まなくなったさきがけは、教職大学院の採用人事でした。新設されたここだけが、従来とちがったかたちでなされていて、それが全体に広がったのです。
給与の配分が不透明なのも、教職大学院に移籍した教員の待遇がどのくらい優遇されているかいないのか、当のご本人たちも含めて、よくわからない状況なのが、かなりことをややこしくしています。

今回、大学院がなくなっても、「教職大学院」は残ります。なくなる大学院の代わりには決してならない、まったく性格がちがうものと言ってもいい組織ですが、この設立や内容や現状が、学内の雰囲気をまた息苦しくさせている可能性があります。

いつも言いますが、外野からのいいかげんな観察なので、まちがいがあったら、どなたでもどうか訂正して下さい。

次回からは、三つの問題点について、ひとつずつ説明してみます。あくまで予定ですけれど。

それから、組合ニュース「楠の葉」は、学長との交渉の内容と、特にハラスメントの問題をとりあげています。私はうまくコピーできないので、「再生を願う会」かどっかで出してくれると助かります。大学院については、現職の先生の、こちらのフェイスブックも参照して下さいね。他の記事も面白いっすよ。

 

 

Twitter Facebook
カツジ猫