福岡教育大学物語32-五木寛之症候群

今回もエッセイ風に、とりとめもなく。

私は小さいころから小説とか、お話を読むのが好きで、それはできれば趣味にして仕事はできるだけ関係ないことをしたかったのですが、運動神経は鈍いし数学は苦手だし外国語もだめだし、結局は趣味を仕事にする国文学でメシを食うしかありませんでした。

まあそれで一応文学はいろんなのを読むし、映画もよく見るわけですが、そういうのがどこまで虚構か現実を反映してるかはともかく、自分の体験とは別に、ついいろんなことを印象づけられてしまって、そのひとつに、「最後に正義の味方になる人は、わりとカッコいいけど、わりとキツい目にあう」ってのがあります。

どっちの味方かよくわからないで、両方から頼られたり疑われたりじれったがられたりしていた人が、いよいよの最後になって、決定的な発言や行動をして正しい方を勝利に導く、とまでは行かなくても、自分の生き方を貫いて、とるべき態度を選ぶ、というとき、いつもじゃないけど、けっこう一番ひどい最期を遂げたりする。「クオ・ヴァディス」のキロとかね。下手したら敵や悪の権化から、一番憎まれて、なぶり殺しにされたりする。

だもんで何となく私はいつも、さっさと帰趨を決めて、旗幟鮮明にして戦いの中心になって敵と対決していた方が、案外最後まで生き残って、あわよくば幸せになれるんじゃないか、と思ったりするし、そうしてしまう。その方が、主役と見えて脇役になれて、目立たないで無事にすむのとちがうか、なんて。

もちろん、この場合、何が正義かどっちが悪かというのは、時と場合でいろいろでしょうし、戦いの中心にいた人が一番ひどい目にあって、ただの、序盤で殺される脇役になるってのも決して珍しくはありませんけどね。

昔、友人と「戦艦ポチョムキン」の映画を見たのね。モノクロの名作ですけどね。無声映画じゃなかったっけ。ひどい支配者に虐げられた戦艦の上で、たまりかねた水兵たちが反旗をひるがえし、蜂起する。そのとき、甲板の上で、そっちに加わる決意ができなくて、ためらってた水兵たちの一群に、いきなり帆布かなんかがかぶせられ、砲撃されそうになる。蜂起したグループよりも、そっちをまず上官たちは片づけようとしたわけで。

友人と私は、名画の鑑賞そっちのけで、「こういう時に、どっちつかずで、ぐずぐずしてちゃいかんのだよなあ」と、しょうもない教訓を、ささやきあってたものでした。(当時の映画館は、ひそひそ話がけっこうできたの。)

まあその場面も史実か創作か意図された描写なのかはわかりませんが。
実は、ここからが、書くのがなかなか難しい(笑)。

ずっと後になって、でもかなり昔(笑)、70年安保か何かで日本が騒然としていたころ、わりと反体制の若者っぽいイメージで人気があった作家の五木寛之が、「自分はまだ発言するときじゃない。いつ発言するかを考えている」とか、言ってたのね。それ聞いたとき、何カッコつけてんねんと言うより、えらく正直な人やなあと思った。そこまでネタばれしちゃしょうがないじゃないかとか。

ここ数年、政府と首相が暴走をくり返す中、あの人が、と思うような高齢の著名な学者が街頭でマイクを握って政府に抗議し、保守派の改憲論者だった小林節は、選挙で共産党の応援を公然どころではない徹底ぶりで行っている。橋本治も死の前に、明確に痛烈に政府と、それを許す国民を批判した。そのたびに私は目を見張り、そして、その人たちもまた、そのままに忘れられたり、戦うグループの一人として埋没して行くのを見た。深い感動と覚悟を持って。五木寛之はまだ何も言わないようだが、それはもうそれでいい。私が今してることだって、結局は彼とあまり変わらないかもしれないし。

教育大のことについて、学内のいろんな人と話し合うとき、さまざまな人が、組合の戦い方を批判しながら、「でも、自分も自分なりに戦っている」と言った。
そうだろうと思う。その人たちの存在がとても重要だと思う。
明確に最後にカッコよくキメてくれなくていい。見えないところでもいいし、もちろん見えてもいい。あえて言うなら少々まちがったっていい。学長にも、組合にも、できないことがある。それを補って、工夫して、よりよい方向を見つけて、作って行ってほしい。

私がこうしていろいろなことを書くのは、そのような人たちを初めとした学内外のすべての人に、なるべく多くの情報と資料を渡して、発言や行動の参考にしてほしいからである。無責任なことは書かないようにしているし、正確を期してはいるが、まちがいも誤解もあるかもしれない。それぞれの持っている情報や資料と照らし合わせて、決してこれだけをうのみにはしないでほしい。でも、これも読んでほしい。ビラもチラシもスピーチも、公式発表も何もかも、あらゆるものと見比べて、状況を把握して「自分なりの戦い」の武器にしてくれればと願う。

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