福岡教育大学物語6-学園祭の芸能人招聘
ところで、政府が法律を変えて、学長の権限をとてつもなく大きくしたのが、諸悪の根源だと言いましたが、だったら全国の他の大学も同じようにひどくなっとるんかいと言われるかもしれません。
必ずしもそうではないと思います。教育大ほどひどい状況のところはめったにないと思います。それは、大半の大学では、学長がその権限を行使しないで、以前と同じように教授会の決定を尊重して、そこで決まったことを学長が追認するというかたちをとっているからです。
ただ、良識や力関係で、今はそういうことになっていても、法律で学長がほぼ何でも決定していいという教育大方式は認められているわけですから、どこの大学もある日突然か、いつの間にかじわじわと、そうなる可能性は常にあります。くれぐれもご注意下さい。
さて、もう昨日になりますが、教育大の問題について、再び市民と大学の先生方が話し合いました。このような話し合いを定期的に持つことが決まりました。次回は来月になります。それまでにも随時、メールその他で情報交換は行うし、マスコミや市民にも働きかけます。
何しろもう、いろんな話がありすぎて、何から書いていいか、迷いますが、ひとつだけ書いておくと、この前の学園祭で、自治会が呼ぼうとしていた芸能人を、ほとんど話が決まっていたのに、学長が「教育大に『芸人』はふさわしくない」と言い出してキャンセルせざるを得なくなり、80万円あまりの違約金を払うことになったとか。
別におかしな芸能人ではないし、特に政治的な色彩のある人でもありません(あったって全然かまいませんが、最近の学生自治会はそんな冒険はしません)。小学校訪問や一日警察署長などもしており、どこからどう見ても文句のつけようのない人です。これまで学園祭に芸人だか芸能人だかタレントだかは、何人も招かれて出演しています。
80万の違約金は、学生自治会が払いましたが、これは学生全員が学園祭のために積み立てていたお金です。メジャーなタレントなどを呼ぶのはお金がかかるので、在学中に一度、つまり四年に一回、そういう催しをすることにしていて、まあ地方の貧しい大学では学生たちのささやかなぜいたくでもあります。
ちなみに教育評論家として、代わりに来た人の講演の参加者は、学内のダンスサークルの催しよりも少なかったとか。
昨日の集まりに参加した市民の中からは「芸人はふさわしくないという発言自体が差別発言じゃないのか」「パワハラもはなはだしい。自治会と学生が損害賠償で大学を訴えたら絶対に勝てる。裁判費用は私が出してもいい」という声もあがっていました。
学生自治会のメンバーも当然憤慨しているそうですが、多くの学生は中止になったいきさつを知りません。
学生がおとなしすぎると言う人もいるでしょうが、これまで、前学長、現学長の時に「学長へのお願い」みたいな目安箱もどきに、大学への要望や不満を投書したら、匿名なのになぜわかったのか呼びつけられて、「そんなことでは就職に響くよ」と脅かされた学生も何人かいて、そりゃ慎重にもなるでしょう。
もちろんちゃんと抗議する学生もいて、以前、ある講座が廃止されようとしたときに、500名の署名を集めて学長に訴えに行った学生もいます。その時に学長は、「これは、新入社員が企業のトップに意見を言うようなもの。私は経営者だから責任がある」と言って相手にしてくれなかったとか。
毎回書きますが、あくまで一方から聞いた話ですので、それはちがうとか誤解だ曲解だとかいうことがあれば、どうぞ、「お手紙」欄からメールでお知らせ下さい。
それにしても、芸人が教育の場にふさわしくないと言うのなら、吉本新喜劇とべたべたすりよりあっている、どっかの首相はどうなるんですかねえ。
ところで、この連載をごらんになっておられる方、少し古い話ですが、大学の状況を私が書いた「大学入試物語」と、映画「グラディエーター」のパロディ「アカデミアにて」(未完です)も、どうぞのぞいて見て下さい。やたらと長いので、適当につまみ食いして下さい。この連載も、その二つも、いくらでもコピーして利用して下さってかまいませんし、せいぜい、どんどん拡散して下さいませ。