福岡教育大学物語59-宗像市議会傍聴
宗像市議会で、共産党の植木議員が、教育大のことについて質問するという話を聞きこんだので、傍聴に行って来ました。教育大の先生と市民の方も数人来ておられました。
植木さんの質問は二つあって、もう一つは河川工事についてでした。道路の拡張工事との関係で、優先順位や川の氾濫の防止について、現状や県とのやりとりも詳しく調査して、市の政策の転換をせまるというもので、あれは現地の住民の方にはぜひ聞かせたかったなあ。とても面白かったです。面白いどころじゃない、深刻な内容でもあるんだけど。
大雨のときに、川の近くの住宅地や市街が水浸しになっている写真も公開しておられたのですが、市の担当の方が「これは大雨のときのですね」と(「そんな特別の異常事態のことをとりあげられても」みたいなニュアンスで)確認されたのに対して植木さんが、「私は小雨のときの話はしておりません」と穏やかに応じられて、議場に笑いが広がりました。
植木さんはそろそろ世代交代したくて、後継者もさがしておられるらしいという話も前にちょっと耳にしたのですが、ああいう質問を聞くと、まだまだやめないで欲しいなあと思います。
さて、教育大についてですが、植木議員はまず、福岡教育大学を誘致した高山勉町長の「たった1460日 されど1460日」という本を紹介しました。
当時は刑務所移設の計画が先行していて、それを大学誘致に切り替えるには町民の大変な抵抗もあって(500人が議会につめかけたとか。しかし、刑務所が来るのに抵抗や反感を抱く住民感情はなかったのかな。それはそれで、今より進歩的かもしれない)、それを説得しながら、出光佐三氏の協力も得て、ようやく設置に成功した経緯が書かれています。
高山町長は任期は一期で終わってしまったのですが(この本のタイトルもそれによっています。いいタイトルですよね。自分の仕事への誇りがにじんでいて)、おかげで教育大学はこの地に定着し、文化的にも経済的にも大きな役割を果たして来たが、このことをどう思うかという問いかけを市長と教育長に求めました。
市長と教育長は、どちらもけっこう長く、型通りでもない、気持ちのこもったことばで、教育大は宗像市にとって大きな存在であり、とても大切であることを確認されました。
そこで植木議員は、「その教育大が今どのような状況になっているか、把握しておられますか」と重ねて聞きました。
そうしたら、議長と副議長が何か打ち合わせしておられて、「大学の問題は市議会で話し合うことではないと思うので、市長は回答できません」とのこと。傍聴席の市民からは「何で答えられないのか」と野次が飛び、「傍聴席は静粛に」という議長の制止に重ねて「静粛にしとっていいことと悪いことがありますたい」との応酬がありました。
傍聴席の発言は禁じられているので、つまみ出されるかなと思ったけれど、そのままで議事は進行しました。
私は議長団が、そうやって市長に発言させない様子が、しょうもない感想ですが何だかお姫様をかばう家老に見えて、伊豆美沙子市長はいやじゃないのかな、ある意味女性蔑視じゃないのかと思ったり、植木議員が高山市長の本を詳しく紹介して、ある意味型通りの回答しか返って来ないだろう感想を最初に求めたりしたのは、こうなることを予想してのことだったのかと思ったりしていました。
植木議員は、学長の裁量で一方的にさまざまなことが決定される中、従来とれていた教員免許の一部がとれなくなるなど、学生にとって深刻な問題が生じていることなどを上げ、市長は学内の重要な会議にメンバーとして加わっていることも指摘して、さらに回答を求めました。
それに対して教育長から、「西日本新聞で読んで、免許がとれなくなったことが問題になっているのは承知している」という回答がありました。また市長は自分が参加している大学内の会議と、その会議の役割についてだけ説明をされました。
質問時間がなくなったので、植木議員は教育大の問題に関心を持って、市からもそれなりの対応をしてほしいことを再度要請して終わりました。
最後は、市長と自分と、それぞれに教育大に関わりがある者どうしが、高山町長の本なども通して、こうやってこの問題で質疑を交わすようになったことについて、「運命的な流れを感じる」と一種の感動をこめてしめくくられたのも、なかなか印象深かったです。
傍聴席では「もっと熱い議論を期待していたのになー」と言っていた人もいたけれど、あとで聞いたら、議員の中にも教育大の状況については、まったく知らなかった人も多かったようだし、市長と教育長が教育大を大切な存在と考えているのは実感できたし、県議会でもそうでしたけど、自治体としても大学の自治を犯してはならないという観点からも関わるのは慎重にならざるを得ないだろうし、まあ、いろいろと成果はあったと思います。私の要求水準が限りなく低くなっちゃってるのかもしれませんけど。
その後またもれ聞いたことでは、市長は高山町長の本を読んで感銘を受けられたそうだし、もうその本は絶版というかなかなか手に入らないのですが、コピーして市役所の部長さんたちに配られるという話も聞くし、そういう余波も悪くはないのではないかと感じました。
自治体と大学は協力して、たがいの持てる力を発揮して、市を活気づけなければいけないし、そうできる体制を両者が作る必要があります。そういう点からも、教育大の状況は今はいろいろ不十分で、自治体にとってもものたりないだろうと思います。
おまけで、その次の上野崇之議員の質問の感想も。
子どもの貧困化と地域起こしについての二点の質問でした。資料に基づくまじめな質問でよかったのですが、市の担当者の回答が何だか型通りで単調に思え、自分のことは棚に上げて言いますと、「ああいう回答じゃない回答」をさせるような質問をすることが、担当者に対しても親切じゃないかと思いました。プライバシーの問題もあるだろうから難しいのでしょうが、質問も回答も、もっと宗像市ならではの実態に触れてもいいのではないかしらん。
地域起こしの問題は、逆に上野議員の地元の活動と体験に限られすぎているような印象を受けました。それはそれで貴重な資料ですから、もっと全国的な課題や流れの中で見てみるとか、あるいは宗像市だけでも、各地域で高齢化して崩壊しかけている町内会の実態と、そこでがんばっている皆さんの状況とフォローの工夫などへもつなげて行くとか。
全体的に、よく勉強されているけど、血が通っていないという感じを受けました。上野議員のお人柄は知っていて、ご本人はむしろ熱い血の持ち主なのはわかっているので、それはむしろ不思議な気もしたし、惜しい感じもします。
以上、無駄話もまじえての、議会報告でした。なお、傍聴していた人の中には、「教育大に特別支援学校を作る工事(山を切り開いて地盤を固めたりするので)に、市は4億出すとか言ってるけど、今日の植木さんの質問を聞いたら、そんなことより先に、ちょっとの雨で住宅地が水没するのを何とかする河川工事の方が先じゃないのか」という声もありました。
特別支援学校の宗像への誘致自体は、私も含めて誰も反対してはいません。イノシシやマムシや池のある地域を、大枚はたいて安全のために大開発するぐらいなら、宗像にはそのままでも使えるいい場所が、もっとたくさんあるだろうにという話です。あー、またどんどん無駄話になりそうなので、このへんで。