「水の王子」通信(140) 2023年02月02日(木) ミーハー精神 「水の王子 山が」第三十二回 【スセリの決心】 けものの、ぴんと立てた大きなふさふさのしっぽの毛が、あるかなきかの風にそよいだ。なぜか今日は、けものはうならなかった。タカヒコネの足の回りを、子細らしい、もったいぶった様… [続きを読む]
「水の王子」通信(139) 2023年02月01日(水) ミーハー精神 「水の王子 山が」第三十一回 【月が満ちる前に】 先ほどまでの、全身にはりつめていた力はもう失せて、すくみあがったように動けずにいるタカヒコネから、ツクヨミはふっと目をそらして顔を上げた。かすかに笑って彼は身体も起こし… [続きを読む]
「水の王子」通信(138) 2023年01月31日(火) ミーハー精神 「水の王子 山が」第三十回 【真実の悪を求めて】 いつの間にかうなだれているタカヒコネを見つめるツクヨミの目が、すごみを帯びて青く光った。 「聞け」彼は静かに言った。「せっかくおまえが大切な秘密を教えてくれたんだから… [続きを読む]
「水の王子」通信(137) 2023年01月31日(火) ミーハー精神 「水の王子 山が」第二十九回 【消された未来】 タカヒコネは顔色ひとつ変えなかった。黙って湖面を見つめていた。ただ舟べりを握った手に力がこもって、指の節が白くなった。 ツクヨミはそれを見ていた。「おやおや」と彼はから… [続きを読む]
「水の王子」通信(136) 2023年01月30日(月) ミーハー精神 「水の王子 山が」第二十八回 【魚の影】 「うまいじゃないか」からかうような声がかかって、コトシロヌシの祭りの日のことばを思い出してみていたタカヒコネは、はっとしてふりあおぎながら、とびきりの明るい笑顔を作った。 … [続きを読む]
「水の王子」通信(135) 2023年01月30日(月) ミーハー精神 「水の王子 山が」第二十七回 【穏やかな日々】 湖を渡ってくる風がうすら寒い。タカヒコネは泥のついた手をちょっとこすり合わせて息を吐きかけると、かなりつるの伸びてきた野菜をよけながら、柵のこわれた部分をひもでしばり直… [続きを読む]
「水の王子」通信(134) 2023年01月30日(月) ミーハー精神 「水の王子 山が」第二十七回 【おかしな獣】 オオクニヌシが家に入って行ったとき、へやの中は何だかおかしな雰囲気だった。つぼやかごが、いくつかひっくり返り、ううふうう、ふううと、けんのんなうなり声がしている。スセリは… [続きを読む]
「水の王子」通信(133) 2023年01月27日(金) ミーハー精神 「水の王子 山が」第二十七回 【深まった闇】 「行きも帰りも同じ道っていうのもつまらんだろ」雲ひとつない空の下を、まぶしく輝く海を見下ろして舟を飛ばせながらツクヨミが言った。 「そうだな。いいながめだ」オオクニヌシも… [続きを読む]
「水の王子」通信(132) 2023年01月26日(木) ミーハー精神 「水の王子 山が」第二十六回 【殺された男】 「あのころ都の中では新しい動きがあった」スサノオは二人の前の湯のみに、新しい茶をついだ。「若者たちを中心に、次第に年かさの者たちにも広がって行った。危険なものではなさそうだ… [続きを読む]
「水の王子」通信(131) 2023年01月26日(木) ミーハー精神 「水の王子 山が」第二十五回 【夜な夜な考えても】 「さっきオオクニヌシがいきなりタカヒコネのことを言い出したから、驚かれたかもしれないな。私にもとめるひまがなくってね」ツクヨミは笑った。「あなたもなぜだかおわかりにな… [続きを読む]
「水の王子」通信(130) 2023年01月25日(水) ミーハー精神 「水の王子 山が」第二十四回 【消える手がかり】 スサノオは小さく何度かうなずいた。そして粗末な木の湯のみに茶を注ぎ、それぞれの前においた。飲んでくれとすすめるように手を動かして、再び椅子に腰を下ろす。 「君は私とこ… [続きを読む]
「水の王子」通信(129) 2023年01月25日(水) ミーハー精神 「水の王子 山が」第二十三回 【スサノオの暮らし】 スサノオの家は、高い四角な石造りの建物の中にあった。その建物は斜面によりかかるように建てられていて、高い階の裏口は坂道の途中に直接続いていたが、通りからの正面の入り口… [続きを読む]
「水の王子」通信(128) 2023年01月24日(火) ミーハー精神 「水の王子 山が」第二十二回 【マガツミの弁舌】 「当然だ。そのどこがわるいんだね?」一本足のマガツミはいきなり、世にもさわやかな歯切れのいい口調で言い出した。「人間にとって都合のいい生き物? それは人間にとって都合の… [続きを読む]
「水の王子」通信(127) 2023年01月22日(日) ミーハー精神 「水の王子 山が」第二十一回 【老女は語る】 「予想してないこともなかったが、この都じゃタカヒコネの人気は昔のスサノオ以上だな」フナドの妻と息子が野菜のかごを家の中に運び込んでいる門口で、ツクヨミがオオクニヌシにささや… [続きを読む]
「水の王子」通信(126) 2023年01月22日(日) ミーハー精神 「水の王子 山が」第二十回 【若い王の思い出】(つづき) 「しかしさ、私もいろんな国を旅してきたが」ツクヨミが言った。「ヨモツクニのマガツミというのは、今この都で働いたり皆と暮らしたりしているマガツミみたいな、あんな姿… [続きを読む]