水の王子・「岬まで」5 2023年12月26日(火) ミーハー精神 第三章 師弟 どこまでも見わたせる広い平原と、それをおおう青く輝く空。あいまいにかすむものは何ひとつなく、遠くの地平も手もとの草も、すべてがはっきりとみがかれたようにまぶしく、それぞれのかたちと色を見せている。あちこちに… [続きを読む]
水の王子・「岬まで」4 2023年12月26日(火) ミーハー精神 第二章 草原の片すみで 「いっつも思うことなんですけどねえ」魚売りの女はかごを下ろした縁先で、湯のみを口に運びながら、のんきな口調でそう言った。「こんな、だだっ広いとこの、ぽつんと一軒だけの家で、女三人だけで暮らしておら… [続きを読む]
水の王子・「岬まで」3 2023年12月25日(月) ミーハー精神 ※ 次の日の朝、ハヤオが起きたときには、もうヤシマは外に出て、川からくんで来た手おけの水を、台所の樽の中に入れていた。オオヤマツミはあいかわらず眠りこけており、ナキサワメは床をみがいて掃除をしていた。 「何… [続きを読む]
水の王子・「岬まで」2 2023年12月25日(月) ミーハー精神 ※ 「ヤシマさん、もっと食べなさいよ」ナキサワメは涙をぬぐいながら言った。「あんなに働いて、屋根も直して下さったのに、それじゃ身体がもちますまい」 「森で、鳥やけものを狩って、食べておりますから」ヤシマはひ… [続きを読む]
あら、うれしい! 2023年12月24日(日) ミーハー精神 えー、「水の王子」連載、本当に長くお休みしていたので、今さら読んで下さる人がおいでなのかな、とびびっていたのですが、そこそこアクセスあるばかりか、即座にいいねをつけて下さった方までいらして下さって、びっくりしたり安心した… [続きを読む]
水の王子・「岬まで」1 2023年12月23日(土) ミーハー精神 だいぶお休みしましたが、ぼちぼちと書きためていたのを出して行きます。 前に連載していた「渚なら」に続きます。 まあ、前のこと知らないで、これだけで読んでも楽しめますけど、多分(笑)。 イラストも久しぶりに描いたら、何だ… [続きを読む]
好きな本、きらいな本、読んでほしい本 2023年11月27日(月) ミーハー精神 (授業で学生から「おすすめの本を教えて」という要望があった。 それでちょっと書いてみたら、あまりにも多すぎた。 一応書名を羅列しますが、おすすめの理由や感想など追加し、グループ分けをするなど、半永久的に更新しつづけます… [続きを読む]
新しいロゴ 2023年09月16日(土) ミーハー精神 使うかどうかわかりませんが、鳩時計文庫のロゴをもう一つ作ってみました。 紙本のページ数が少なくて、背表紙が狭くなった時のためのスリムバージョンです(笑)。 ボツにするかもしれないので、一応ご紹介しておきます。 次の続… [続きを読む]
「水の王子」紙本について 2023年09月13日(水) ミーハー精神 「水の王子」紙本を手にして下さったあなたへ 小さい時から小説を書いていた。と言っても断片で、誰にも見せずに書いてすぐ破棄していた。中学生のころ、授業中に教科書の両側の余白にせっせと小説を書いて、授… [続きを読む]
オオクニヌシの兄弟 2023年09月13日(水) ミーハー精神 「水の王子」の第五部を書き上げたときは、「これでやっと縁を切れる」と思っていたのがとんでもない、どんどん続編が生まれてしまって、話が展開しっぱなし。 思いがけないのは、四十年前最初に書いた第三部では、重要だけれど地味な脇… [続きを読む]
水の王子・短編集「渚なら」18 2023年09月02日(土) ミーハー精神 第十一話・渚なら その昔、この沼にはクマノクスビ、アマツヒコネ、イクツヒコネという名の三人の兄弟が住んでいたという。本当の兄弟だったか、ただの仲間だったのかはわからない。彼らは、かつて草原を荒していて、タカマガハラのスサ… [続きを読む]
水の王子・短編集「渚なら」17 2023年09月01日(金) ミーハー精神 第十話・溶けない氷(下) サルタヒコは首をかしげて、目をこらした。 「こりゃ何じゃ? ヌナカワヒメ」 「あなたはあちこち、遠くの港にも行くから、ひょっとして似たものでも見たことはない?」 「いや、ないな。何じゃこれ… [続きを読む]
水の王子・短編集「渚なら」16 2023年09月01日(金) ミーハー精神 第十話・溶けない氷(上) 「多分、これでもう大丈夫」ヌナカワヒメは、若い船乗りの足の副え木と包帯をたしかめ直して保障した。「ひと月とたたない内に、また船に戻れるようになりますよ」 まだ子どものような船乗りは目を輝かせた… [続きを読む]
水の王子・短編集「渚なら」15 2023年08月30日(水) ミーハー精神 第九話・兄たち(下) 昼すぎてもまだミズハは、タカヒコネの部屋にいた。寝台の横の床に座って、せっせと布で何かをみがいていた。 「それ何?」寝台の上からタカヒコネが聞いた。 「あれ、起きたの?」ミズハはふり向いた。「ご… [続きを読む]
水の王子・短編集「渚なら」14 2023年08月30日(水) ミーハー精神 第九話・兄たち(上) 「あなた、赤とんぼが飛んでるわ」湖を見下ろす縁側の手すりによりかかって、洗ったざるを乾かしていたスセリが声をあげた。「夏もそろそろ終わりなのですね」 「この冬の寒さがあまり厳しくないといいがな」火… [続きを読む]