水の王子・「岬まで」30 2024年01月15日(月) ミーハー精神 ※ 「ヤノハハキは文字通り、水を得た魚のようだったよ」オオクニヌシは言った。 「生き生きとして、まるで何十歳も若返って行くようだった。ああ、それでつながる、ああ、それでわかる、と言いながら、聞いている間にも… [続きを読む]
水の王子・「岬まで」29 2024年01月15日(月) ミーハー精神 ※ 「あとはもう話すことはほとんどないと言っていい」オオクニヌシは疲れたように枕に身体を沈めて目を閉じた。「フカブチをクエビコにまかせて、私とサルタヒコは、にせものの二人の王をしばり上げ、兵士たちの武装を解いた… [続きを読む]
水の王子・「岬まで」28 2024年01月14日(日) ミーハー精神 ※ 外は曇って来たのだろうか。また雪がふるのかもしれない。 それだけではなく、どこか無気味な落ち着かない空気があたりにただよいはじめているようだった。クシマトの表面の目が、あちこちに、うろうろとすべるように動… [続きを読む]
水の王子・「岬まで」27 2024年01月14日(日) ミーハー精神 ※ 「父上たちはどうやって、フヌヅヌたちとの話し合いをつけようと計画しておられたのですか」コトシロヌシが尋ねる。 「こちらから出す条件は簡単だった」オオクニヌシは言った。「フヌヅヌには以下のことを告げること… [続きを読む]
水の王子・「岬まで」26 2024年01月14日(日) ミーハー精神 ※ 「ウカノミタマって人のことを父上はまだ全然話してくれてませんよね」コトシロヌシが言った。「彼はどういう人だったんです?」 「さしあたりフカブチは彼のことが大嫌いだったな。今もそうだが」オオクニヌシは言っ… [続きを読む]
水の王子・「岬まで」25 2024年01月14日(日) ミーハー精神 ※ 「私はどれだけ寝ていたんだ?」オオクニヌシはあくびをしながら、そう聞いた。 「一日とひと晩」コトシロヌシが窓辺から戻ってきて、枕もとに座りながらほほえんだ。「そんなに長くじゃありません」 「一年も寝て… [続きを読む]
水の王子・「岬まで」24 2024年01月13日(土) ミーハー精神 ※ 何かもう、そのことを予測していたように、コトシロヌシがうなずいた。 タカヒコネも静かな表情のままだった。 驚いたのはニニギだけで、「どちらにですか?」とせきこんで聞く。 「フヌヅヌとオミヅヌの町だ」… [続きを読む]
水の王子・「岬まで」23 2024年01月13日(土) ミーハー精神 第九章 旅の果てに 数日ふり続けていた雪は夜の間にやんだ。オオクニヌシの家の回りは小さい畑も森も小道も一面にまっ白く埋もれて何もかもがなだらかに丸く、朝日にきらきら光っていた。よろい戸を開け放していっぱいに開いた窓の、… [続きを読む]
水の王子・「岬まで」22 2024年01月11日(木) ミーハー精神 ※ 「もういいんだよ、ウガヤ」数人の子どもたちと連れ立ってついて来ていたミヅハがそう言ってウガヤをとめ、ウガヤは「もういいもういいもういい」と小声でくり返しながら羽をたたんで畑の柵の横木にとまった。 「そ… [続きを読む]
水の王子・「岬まで」21 2024年01月11日(木) ミーハー精神 ※ 灯台の近くのマガツミたちは、うろうろ動き回っていたが、おおかたは動きをとめて座りこんだままだった。スクナビコの薬でとかされたマガツミたちの方は、かなり広い範囲に広がってとろりとひとつに溶け合ったまま、その… [続きを読む]
水の王子・「岬まで」20 2024年01月11日(木) ミーハー精神 ※ 白い小さな星のように激しい輝きが、いくつも畑の向こうで生まれた。大小さまざまの光が矢のように飛んで来て、押し寄せてきていた影のいくつもが、よろめいてひざをつき、向きを変えた。ウガヤの鳴き声にまじって、ど… [続きを読む]
水の王子・「岬まで」19 2024年01月10日(水) ミーハー精神 第八章 襲撃 刃と刃ががっきとかみあい、暗い曇り空の下で赤い火花を散らした。ずるずるすべるあぜ道に足をふみしめて身体を引きながらタカヒコネは、荒々しくうなるイナヒの声を聞いた。相手は大した使い手でも強い力の持ち主でもな… [続きを読む]
水の王子・「岬まで」18 2024年01月06日(土) ミーハー精神 ※ おれは、死んだフハノのことを考えている。 ずっと、ずっと考えている。 おれが覚えていなければ、思い出しつづけなければ、あれのことはもう誰もわからないまま、この世から消える。 … [続きを読む]
水の王子・「岬まで」17 2024年01月05日(金) ミーハー精神 第七章 絵巻物 女は磨き上げられて鏡のような木の床の上に足をやや開いてふみしめ、広間の中央に立っていた。 一見、娘だ。だがよく見ると中年女だ。後ろに流して切りそろえた髪、ひじから先はあらわな、ひきしまった腕。上半身も下… [続きを読む]
水の王子・「岬まで」16 2024年01月03日(水) ミーハー精神 ※ 「でさー、そーゆーわけでさー」祭りの準備でごった返している村人たちの一角で、つみ重ねた太鼓によっかかって一休みしながら、クマノクスビはいつものくったくのない調子でぼやいた。「あのおっさんのいうことが、どう… [続きを読む]