小説「散文家たち」第25章 バ-スデ-パ-ティ-

「ほんとにこんなこと、してもいいんかなあ?」
斎藤眉美が、小さな丸テ-ブルの上に、クッキ-の入った赤い紙箱をおきながら、どことなく不安そうな声を出した。
「だからさっ、これってバ-スデ-パ-ティ-なんかじゃないんだったら!」
二つのベッドをうんうん言いながら押して一つにくっつけながら、大西和子がきっぱりと言う。
「たまたま、あんたの生まれた日に、おばさんからの小包が届いただけっ!その中身を皆で山分けするついでに、お礼の品々ちょこちょこっと持ち寄って、パジャマのままでベッドの上で、お菓子食べてジュ-ス飲んでおしゃべりするだけっ!こんなのの、どこがバ-スデ-パ-ティ-なのさっ!?」
「そんなんで、しのぶ、納得するかあ?」眉美はますます不安そうだった。「いやさ、しのぶが納得しても、あの子の身体が納得するかあ?」
「いやらしい言い方すんじゃないよ」
「え~っ、どこがよっ!?」
言い争っている二人には、ノックの音が聞こえなかった。ドアが開いて、クリ-ム色のトランプ模様のパジャマの朝子が、白い大きな紙の箱を大事そうに抱えて現れる。
「遅くなっちゃったあ!ねえ、南条さんがケ-キ焼いてくれたよ。ピンク色のクリ-ムがかかってて、とってもきれい。美尾さんはろうそくくれた。赤と青の縞模様の、すっごくかわいいの!」
「ほら、ケ-キまであるんだよ」眉美が言う。「ろうそくも。どう見たってさ───」 ドアがまた開いて、赤と白のミニバラの束を抱えた司が、飛び込んできた。
「『オリエント急行』にごはん食べに行ったら、ママがお店に飾る花が余ったからって言って、くれちゃった!ねえ、大きなガラスのコップあったよね、和子?あれにこれさして、このテ-ブルの上に置こうよ」
「ちょっと待ってよお!」眉美が大きな声を上げる。「それじゃもう、どう考えたってバ-スデ-パ-ティ-だよう!」
「だって、こんな小さいバラだよ。あ、でも、そんなに気になるんなら、花だけちぎって、ベッドのシ-ツの上にまく?ちょっともったいないけどさ」
「う~ん、やめた方がいいと思う」和子が腕組みして言った。「何か、その方が過激に劇的だもんな」
「あ、でもベッド、うまくくっついたじゃない?」司はバラを抱えたまま、倍の広さになったベッドに座って、はずんで見た。「あと、これにクッション置く?」
「そうそう、それでな、真ん中に大きなお盆おいて、そこにケ-キとかのせてさ。飲み物はそこの丸テ-ブルの上」
「いいな!」司は満足そうに、ベッドの上にあおむけになった。「この前の世界史の時間に、テキストにあったギリシャの貴族たちの宴会みたい」
「しのぶが気にしないかって、眉美が気にしてる」和子が司の手からバラを取って、コップにさしながら言った。
「大丈夫なんじゃない?」冷蔵庫にケ-キを入れていた朝子が、こちらに背中を向けたまま言った。「昨日、あの子が、眉美にプレゼント持ってくんだろって聞いたから、そうだよって言ったら、じゃ何か買いに行こうかなって笑ってたもん」
「ほんと?」司が、真っ白に洗濯した広いベッドカバ-を、くっつけたベッドの上に広げて、しわ一つないようにひっぱって延ばしながら首をかしげた。「辛島さんのあのキメキメのハデハデポ-ズがショック療法になったのかな。だといいけど」
田所みどりが入って来た。
「何だ、しのぶ、まだ来てないの?じゃ先に眉美にプレゼントあげちゃお!」
「え~、いいのオ?」
眉美は何だか複雑な表情で、みどりの差し出す箱をうけとり、リボンをほどいて中を見たが、すぐに「かわいい!」と叫びながら、紺色と金のスカ-トをはいた小さい陶器の人形をひっぱり出した。
「その顔、ちょっと眉美に似てるでしょ?」みどりが笑う。「だから、買っちゃった」 「じゃ、あたしも、あげちゃうね」司はパジャマのポケットから、ぞんざいに紙にくるんだ何かを出して渡した。
「わあ!」眉美は急いで紙を開けて、中からとぼけた顔の灰色の象が出て来ると、笑い出した。「これ、何?」
「あ、バカにしちゃだめ、これ、卓上掃除機なんだよ。しっぽひっぱると、鼻からごみを吸い込むの。消しゴムの屑とか取る時、便利いいんだから!」
和子が見るからに怪しげな手つきで、水差しにいっぱいに入った冷たい紅茶とコップを運んできた。
「眉美、あんたのおばさんの紅茶って、缶見ただけでも上等ってこと、わかるんだけどさ、あたし、南条さんみたいにうまく入れられないや。こんなんで、いいのかなあ?」
「飲めたらいいって」司が言った。「ベッドに上がろ、皆。ケ-キはしのぶが来てから切ろうよ」

皆がわいわいベッドに這い上がった時、ドアが勢いよく開いて、ブル-のパジャマのしのぶが「遅れてごめん!」と言いながら、かけこんで来て、そのまま、司と和子の間に飛び込んだ。
「やん!」司が、しのぶがつかもうとしたクッションをとりあげる。「これが一番、気持ちいいんだから!」
「知ってるよ、だから、ねらってたんじゃないか」しのぶは笑いながら、そのすりきれた灰色のクッションを司から取り返そうとした。「今日は司はホストなんだろ?これは、お客さまに使わせるっ!」
「今日のゲストは眉美だもんねっ!」クッションを抱きしめて司が抵抗した。
和子が司をくすぐったので、司は笑い転げてひとたまりもなくクッションを放したが、朝子がそれを横取りして、また大騒ぎになりかけた。その間に、しのぶは「忘れてた」と言いながらポケットをさぐって、細長い包みを眉美に渡す。
リボンをほどいて、銀色と白のペ-パ-ナイフを見つけた眉美は、喜んで思わず声をあげた。
「きゃあ、ほしかったんだ。叔母さんの手紙開ける時、いつもハサミが見つからなくてさ!」
「昨日、あれから買いに行ったんでしょ?」クッションをあきらめた朝子が、のぞきこんで感心した。「よく、こんな素敵なの見つけたねえ」
「プレゼントさがすのって、けっこう慣れてんだよ」しのぶは笑った。「何しろ、うちの母親って人が、やったらイベント好きな人でさ。お正月とかクリスマスとかは言うまでもなく、雛祭りにお節句にバレンタインに家族皆のバ-スデ-に結婚記念日に、あと何だっけ、とにかく何かっていうと、プレゼント交換してケ-キ食べて、ご馳走作って、家族で祝うのが好きな人だったんだ。それで、家族がつきあわないと、やたら落ち込むんだよね。でも、何だかだで、月に絶対二三度はそんなのあると、こっちだって忘れるじゃないか。父とあたしで、前の日になって、『おいっ、プレゼント買ったか!?』って大慌てで閉店五分前のデパ-トにかけこんで、母の気に入りそうなものさがすとか、そんなことばかりしてたんだよ。だって、ほんとに、うちの母って、十年も前に私が町内の運動会で一等賞になった日まで、記念日にしてお祝いしてたんだからね」
「あんた、それでイベント嫌いが嵩じて今みたいになったってわけ?」眉美が言った。 「どうなんだろ」しのぶはクッションによりかかって苦笑した。「だけど、それ、あるかもしれないなあ。──一番ひどかったのは、いつの年だったかのクリスマスに、母へのプレゼントに次の年の手帳買って、それで安心してたんだ、父も私も」
「二人でいっしょに手帳一冊?」和子が聞く。「それって、ちょっとセコくない?」
「でも、毎月二度も三度もイベントがあるんじゃ、そうなるよォ」司が同情した。「あたしのパパとママより、ましよ。だって、あたしの誕生日って言うと、二人であたしの目の前でダンス踊って見せてくれただけよ、毎年。ご馳走もプレゼントもイベントも何もなし。それでも、二人のダンスなんか、その日しか見られなかったからね、あたし何日も前から楽しみで、すごくどきどきしてた。のってくると、二人でキスしたりするんだもの。それで、あたしに言って聞かせるの。『ね、こうやって、パパとママが愛し合ったから、司が生まれたの。お誕生日には忘れずに、私たちに感謝するのよ』って」
「本当にそれだけェ?」和子が、目を丸くする。
「ほんっとうに、それだけ。あと、何にもなかった」司は言った。「その日はいつも、その後あたし、けっこう満足して幸せな気持ちで、そばの川の土手とか一人でスキップして歩いてたの覚えてる」司は考え込んだ。「よく考えたら、うまくだまされてたのかな」 「ひょっとして、それって麗泉風?」みどりが吹き出して言った。「中学の同級生に、お母さんがここの出身っていう子がいたんだけど、その子、お誕生日には、お母さんがあおむけに寝て、手足で高く、彼女のこと持ち上げて『ヒコ-キ、ヒコ-キ』って上げ下げしてくれるのが、唯一のイベントだったって言ってた。でも、それがすごく楽しみで、友だちのお誕生パ-ティ-とかに招かれても、ちっともうらやましくなかったって。『ごまかされてた、今、思えば』って、よく言ってたけどね」
「でも、眉美の叔母さんは、ここの出身だけど、プレゼントマニアだよねえ?」朝子が言う。
「うん」眉美はうなずく。「使い魔ならぬ、贈り魔」
「でも、しのぶの手帳の話が途中だよ」和子がうながした。
「うん。どっちみち、うちの母は値段とかには別に全然こだわらなかったんだけどね」しのぶは言った。「それに、その時買ってた手帳って外国製の洒落たやつで、けっこう高かったし。ところがイブの夕方になって、手帳をラッピングしてた父が『こりゃまずい』って、突然あわて出してさ」
「え~、どうしたんだろ?」皆、顔を見合わせる。
「乱丁、落丁があったとか?」と司。
「やらしい絵でも入ってたとか」と和子。
「そんなんじゃないよ」しのぶは笑い出した。「外国の手帳だろ?日本の休日とか何も書いてないかわりに、英語で各国の行事が───聞いたこともないようなのから、どっかで聞いたような気のするのまで、いっぱい書き込んであったんだ。レイバ-デ-だろ?独立記念日だろ?革命記念日に、聖何とか様の祝日に、ラマダンまであったよ、たしか」
「ああ、お母さんにそれ見せたら───!」朝子が思わず、両手を握りしめる。
「当然、全部やるって言いだすに決まってる。父と私は、うれしそうにのぞきに来る母から手帳かくして、デパ-トに全速力でかけつけたよ。かわりに何を買ったのか、もう覚えてもいないけど、うまく行ったんだろうな、多分。そのあと、何か騒ぎになったって記憶はないから」
「あんたが、イベント嫌いになるのも無理ない」和子が納得した。「でも、言っとくけど、今日のこれはバ-スデ-パ-ティ-なんかじゃないからね」
「うん、わかってる」しのぶは黄色いクッションを抱きしめて、くすくす笑った。
みどりと司が冷蔵庫からケ-キを出して、「ろうそく立ててもいいのかな?」と小声でひそひそ相談している間に、ベッドの上では朝子が化粧道具のセット、和子がインディアンの雨を降らせるまじないの棒というプレゼントを眉美に渡し、その、サボテンの枝を乾して固めたという、すりこ木のようなまじない棒が皆をさんざん笑わせていた。
「いったい、こんなの、どこにあったの?」眉美が不思議がる。
「郵便局の横のビルん中にある、世界の民芸品とか売ってるお店」和子は紅茶をすすりながら、得意そうに顔をそらした。「振ったら、中でサラサラ音がするでしょ?そしたら大雨になるんだよ」
「さしあたり、今夜は振らない方がいいな」しのぶが忠告した。「さっき、食堂のテレビのニュ-スで、台風が来るって言ってたよ。下手すりゃ今夜の夜中近く、このへんを直撃するかも知れないって」
「あ、それで寮委員の人たち、さっき雨戸閉めて回ってたの?」
「でも、風台風でしょ?」ケ-キを運んできたみどりが言った。「雨はそんなに降らないらしいよ」
「停電とかするかな?」朝子が、ちょっと不安そうにする。
「だから、ろうそく立てておこうね」みどりが、はしゃいだ声をあげて、赤と青のだんだら縞の細長いろうそくを、ケ-キの上に立てはじめた。

果して、夜が更けるにつれて、なまぬるい風が強く吹きはじめた。あけはなしのガラス窓と網戸が、不規則にがたがた音をたてて鳴る。司と和子はベランダに出て、せっせと鉢植えをへやの中に運び込んだ。
「このバジル、何か元気がないなあ」司が、やわらかい小さい緑の葉をいっぱいつけた草の中に、心配そうに顔をつっこんだ。「匂いはちゃんとしてるのに。───雨戸も閉める?和子?」
「まだいいさ。暑いもん」
「まだって、でも、閉めようと思った時は遅いんじゃ───」司は気にしてふりかえりながら、ベッドに戻って来た。
「おいしいなあ!」ベッドの上では、朝子がケ-キの最後の一切れを食べながら、満足そうにため息をついている。「『野いちご』や『ミス・マ-プル』のケ-キよりおいしいぐらい。南条さんって、どうしてこんなにケ-キ作るの、上手なんだろ?」
「ケ-キだけじゃなくって、南条さんも来ればいいのにね」
「誘ったんだよ。でも何か、今夜は用事があるってさ」
「何か、こうやって、皆でベッドに上がってて、南条さんがいないと、変な感じ」司が言った。「だって、今度の『若草物語』って、四人姉妹はいろんな人が入れ代わるけど、お母さんのマ-チ夫人だけは、いつも南条さんだもん。絶対いなきゃおかしいって、つい思っちゃうよね」
「入れ代わるとは言っても基本はあくまでも、長女のしとやかなメグがしのぶ、次女の元気なジョ-が朝子、三女のやさしいベスがみどり、末っ子の甘えん坊のエイミ-が司、なんだよ」眉美が、ひとりひとりを指でさしながら、おさらいして見せた。
「それって、でも、考えて見れば手抜きよね」みどりがぼやく。「三銃士とダルタニアンをそのまま使って『若草物語』の四人姉妹をやらせるなんて、話題づくりにしたって、ちょっとあんまりよ」
「まだ『細雪』じゃなかっただけありがたいって思いなさいなんて、美尾さんたら、変な恩の着せ方するんだよ」司も嘆いた。
「知ってる?南条さんが、この前言ってたこと」朝子がフォ-クをくわえたまま、皆の顔を見回す。「クリスマスには『ベン・ハ-』やって、主人公のベン・ハ-が戦車競技で走らせるアラビア産の白馬四頭を、あたしたちにやらせるんだって。白いタイツでたてがみつけて、戦車競技をダンスで表現させるって。本気なのかなあ?」
「本気だろ。私、もうそれは半分あきらめてるよ」しのぶが言った。「もっと恐いのは───いやまあ、今から苦にしてもしかたがないか」
「ちょっと、言ってよ、しのぶ。何なの?」みどりが気にした。
「美尾さんたちに、そんなこと考えてないでしょうって念押したいんだけど、そんなことしたら、あの人たち絶対、それまで考えてなくっても、いいこと思いついたと思って即実行しそうで」
「ねえ、何なのよ?」朝子も真剣な顔になった。
「ほら、ベン・ハ-のライバルっていうか、悪役のロ-マ貴族のメッサラが、戦車競技でベン・ハ-と対決するだろ?小説の方は覚えてないけど、映画だと、メッサラの戦車の馬は黒馬四頭なんだよな」
「それで?」朝子が聞く。
「あの、従者やった四人が、黒いタイツはいて黒馬になって───」
「嘘っ!」司が硬直した。
「まあ、まだ考えてはいないと思うけど」しのぶがつぶやく。
「まったくもう、冗談じゃないわ」みどりが怒る。「まさか、このまま、あたしたちに『オズの魔法使い』の東西南北四人の魔女とか、義経の家来の四天王とか、ビ-トルズとか、春夏秋冬とか、四大元素とか、かたっぱしからやらせようなんて思ってるんじゃないでしょうね?もし、そんなこと考えてるなら、あの人たちって、この前のこと全然反省してないってことよ!」
「でも───おわびのしるしだって言って、演劇部室で、あたしたち四人だけを観客にして、特別公演の『三銃士』やってくれたじゃない?」朝子が言う。
「あれはほんとに、すごかったよね」眉美が言った。「見てるあんたたちも感動もんだったろうけど、いっしょにやってるこっちも圧倒されっぱなしだったよ。美尾さんのダルタニアンは、あたしのケティ-を片手で軽々抱き上げちゃうし、アトスの朝倉さんとミラディ-の上月さんの対決は、見てて血も凍りそうだったし。ポルトスの峯さんは笑い声から足音までが豪快そのもの、アラミスの日村さんは手袋ひとつはずすんでも、もう神秘的なまでに優雅で」
「それを、あたしたち四人だけがソファ-に座って、お客さんになって見せてもらったんだもの。お茶とお菓子まで、前においてもらって!」司が深々と吐息をつく。「あたしもう一生、獅子座の流星群もハレ-彗星も見なくっても、絶対文句言うまいと思った」
「そりゃあ私も、うっとりしたけど」しのぶが肩を落とす。「今、考えると、その興奮がさめなくて、まだぼうっとしている時に、『若草物語』のキャスト教えられて、『いいわね?』って念押されて、何が何だかわからないまま、はいって言っちゃったんだよな。たしかに、おわびの気持ちに嘘はなかっただろうけど、あの人たちの深謀遠慮な計画だったと疑えないこともない。あんな時でなかったら、私、絶対メグなんてひきうけてやしないだろうからね。四人姉妹の中でも一番女らしくて、ドレスが似合う人の役なんて!」
「あたしだって」朝子が吐息をつく。「男の子みたいにきりっとして元気のいいジョ-なんて、全然あたしに似合わない」
「ぜいたくな文句ばっか言って。主役もらっときながら罰があたるよ」眉美がたしなめる。「それに、どっちみち、今回はあんまり役のイメ-ジにこだわる必要、ないんじゃない?今度のこの『若草物語』は、演出の日村さんが言ってるとおり、『あなたも、四人姉妹の一人になれます!』って、観客参加のサ-ビスが目玉なんだから」

「でもさ、ほんとに日村さんもすごいこと考えつくよね」大西和子が首を振った。「だって、うちの生徒はもちろん、それ以外の人でも誰でもいいから、飛び入りで主役の四人姉妹の誰か一人を演じていいなんて、そんな、空恐ろしい企画!」
「下手すりゃ毎回、ドタバタ喜劇だって思ったのに」みどりがうなずく。「そうひどくもならないで、お客さんにも大好評だし、一応成功してるのは、これってやっぱり、日村さんの演出がうまいせい?」
「うまいっていうか、あの人おだてるのが上手だからなあ」しのぶがベッドから下りて新しい紅茶を作りに行きながら、ちょっと窓の外をのぞいた。「わあ、すごい。空はもう真っ黒だし、海が真っ白に波立って荒れてる。そろそろ雨戸、閉めとくよ」
「あ、ほんと。風も何だかひどくなったね」
少女たちは、網戸をはずし、雨戸をひっぱって閉めはじめた。何人かはケ-キの皿をかたづけて、アイスクリ-ムや果物を冷蔵庫から出す。
「まったく日村さんのおだて方って、はんぱじゃないもんねえ」メロンを切りながら眉美が言った。「『斎藤さん、あなたのマ-チ氏がいるから、南条さんのマ-チ夫人がひきたつのですわ』なんて、いくらあたしでも真っ赤な嘘と気づくしかないようなことを、ぬけぬけ言ってくれちゃってさ」
「『大西さん、ハンナってマ-チ家のお手伝いだけど、事実上の主役なのだから、あなたでなくてはやれないわ』とかね」和子も首を振る。「ほんとにそう思って言ってますかって、つっこみたくなること何度もあるよ」
「私、一回言っちゃったよ」しのぶが雨戸を閉めおわって、両手をはたきながら言う。「だって、あの人、夜会服着た私の肩をなでながら『まあ、何てきれいな肩かしら。ロ-リ-やジョンに引き渡すのがもったいないようですわ。雪花石膏か大理石でできたギリシャの彫刻のよう』なんて言うんだよ。もうっ、人が肩はば広くて身体がでかいの気にしてるって知ってるくせに!思わず振り向いて『ヘラクレスか円盤投げの彫刻ですか?』って聞いちゃった。でも、あの人ったらびくともしないで、私としっかり目を合わせて『ほほほ、何をおっしゃるの。それはもちろんヴィ-ナスの像に決まっていますわよ』って。嘘つきっ!」
「でも、しのぶ、ウェストが細いもん、あの女装、すごくきれいだったよ」朝子がまじめになぐさめる。
「南条さんが作ってくれた、肩のめだたないドレスのせいさ」しのぶは朝子の言い間違いにも気づかなかったらしく、紅茶に氷を放り込みながらため息をついた。
「あたしが、この前練習中に疲れて不機嫌な顔してたら」みどりが肩を軽くすくめる。「日村さんたら、例の甘あい声で耳元で、『かわいいベスちゃん、休憩時間にまでそうやって、死ぬ直前のベスの表情研究してるの?役者の鏡ね』って。『三銃士』で峯さんにどなられまくったあとだけに、何だか調子狂っちゃう」
「でもみどり、ああいうの平気?」司が、げんなりした顔で言う。「あたしはいっそ峯さんに、ボケとかバカとかどなられてる方が気楽よ。この前の公演のあとで日村さんが、あたしのこと手招きして、『エイミ-ちゃん、まさかうっかり絵筆忘れて舞台に出て行ったんじゃないわよね?あそこで絵を描いてロ-リ-を待つって演出に、何かご不満があったのかしら?』って、にこにこしながら言った時には背筋が凍りついちゃった」
「自分があれこれ言われるのは、まだいいって」和子が、アイスクリ-ムを皆に配りながら言う。「飛び入りの人をおだててる時のあの人って、ほんとに単なる恥知らずだよ。眉筋ひとつ動かさないで嘘八百をべらべら言うもん。とっても聞いてらんないや。早川雪江がこともあろうに、メグをやりたいって申し出てきて、あたしら皆まっ青になってんのに、あの人ったら、あのビロ-ドみたいな声で『まあ、すてき、早川さん、あなたって生まれながらのメグだって、わたくしたち一同、ずっと思ってましたのよ』───思ってない、思ってない、そんなの絶対!」
「いいんじゃない?早川さん、あれでほんとにうれしそうに、ぼうっと顔赤くして、けっこう何とかメグをやったじゃないさ?」眉美が言った。「もっとひどくなると思ってたのに、一応メグに見えたもん。あんなにちびでころころしていて、一本調子のかんだかい声で、せりふ言ってたわりにはさ」
「そりゃ、私だってメグをやれるんだから」しのぶがつぶやく。
「そんなにぐれないの。ほんとに自信ないんだね」みどりが笑って、しのぶの肩をたたいた。「でも、メグをやりたいなんて、早川さん、珍しいよね。けっこう、飛び入りの人って皆、ベスをやりたがるでしょ?おかげで、あたしは暇でいいけど」
「案外、やりやすいのかもね、ベスって」朝子が首をかしげる。「性格いいし、死んじゃうから、もうけ役だし、最初は上品ぶっててだんだん家庭的になっていくメグとか、ラストで目もさめるようなしとやかな令嬢になるエイミ-とかとちがって、ずっとあんまり変わらないし」
「一年生の水谷とか、三年生の山部さんとかのベス、皆、それぞれよかったもんね。あっ、ほら、ミカちゃんのベスもすっごくはまってたよ。恥ずかしそうにしてるのが、そのまんまイメ-ジにぴったり合ってて」
「それから、名前知らないけど、亀山高校の制服着た子も上手だった。お母さんと三日続けて見に来たって言ってたけど」
「どうして『三銃士』の時にも、この企画なかったんですかって、不満そうにしてたよね」
「赤いシャツ着て、髪を金色のメッシュにして、ピアスいっぱいつけてた子のベスも、なかなかよかったじゃない?」
「あの子、ひょっとして男の子じゃなかった?よくわからないけど。あんまり身体さわらせなかったし」
「そうかな?そう言えば声も低かったよね」
「声が低いって言えば、あの、お掃除おばさんまでベスやったんだもんなあっ!」眉美が思い出してもぞっとすると言ったように、身ぶるいした。「ほんとにもう、どうしようかって思ったよ。あのおばさんが、あの日焼けした赤い顔にピンクのガウンで、ぶっとい腕でがしっとあたしの両肩つかんで、『お帰りなさい、お父さま!』ってドスのきいた低音で言ってくれた時にはもう───」
「でも眉美えらいよ。全然笑わなかったろ?」
「笑うどころかよ、恐くって。あのおばさんたら、目だけはしっかりベスになってて、妙にとろ~んと霞んでるから、なお恐かった」
「なのに、日村さんたら幕間に、あのおばさんに向かって『すてきですこと、どうやったら、あんなに、はかない美しさが出せるんでしょう。見ていて胸がしめつけられそうでしたわ』なんて、まあ、しらしらと、ぬけぬけと」
「しかも、あのおばさんがまた、『そうかねえ。まあ、あたしも、その昔は村芝居で青年団の花形で』とか、何かわけのわかんないこと言ってるし」
「そうしたら日村さん、『あら、そうでしたの!やっぱりちがいますわねえ。プロの劇団にいた方かしらと思ったりしながら拝見しておりましたのよ』───あの人には、ほんとに良心ってものがないの?いくら何でも、言っていいことと悪いことがあるよね、まっとうな人間なら」
「でもね、そのせいかもよ。ものすごいベスではあったけど、早川さんのメグと同じに最後は何とかサマになってたもん。客席もそんなに笑ってなかったろ?」
「それどころか、ベスが死んだ時には泣いてた人もいたから、信じられない」
「あたしも、ちょっと思ったの」朝子がまじめな顔で言う。「ベスって、ひょっとしたらほんとは、こんな人かもしれないって」
「嘘、まさか、何で!?」
「何で、って───」朝子は口ごもる。「ベッドで死んでいくベスを見てて、何だかほんとに悲しくなったの、あのおばさんの時だけだったもん。そりゃさ、あのごっつい顔にまっ白けにお白粉塗って、ネグリジェの袖から太い腕がにゅうっと出てるのって、すさまじいなんてもんじゃなかったけど、でも───本当に人が死ぬのって、何かこういう、救いようのない、やりきれないもんなんだろうなって、そんな気がちらっとした。しのぶ、そんな気、しなかった?」
「そんなこと感じてる余裕なんてなかったよ。あのおばさんの変な、独特の歌舞伎調だかナニワブシ調だかのリズムつけたせりふに、こっちもつられないようにするので、せいいっぱいで」しのぶが、ぼやいた。「南条さんが、時々アドリブで抱き寄せてキスしてくれて、『がんばっているのね、メグ。えらいわ。神さまは見てますよ』って、はげまし半分、気分をかえてくれなかったら、きっと、もたなかったなあ」
「『三銃士』のトレヴィル隊長の時も南条さん、よくアドリブで肩に手をかけてにっこり笑ってくれたりして、そのたび、すごくほっとしたもんね」みどりが、思い出して言った。
「でもさ」司が肩をすくめる。「マ-チ夫人の南条さんにキスされる時、口ひげがないと、ちょっと変な感じがしなかった?『三銃士』で隊長と挨拶する時、いつもキスしてたのと、何か微妙にちがうんだもん」
「そうそう、特に初めのころは」しのぶが笑う。「何か、あれっ?っていう感じで」
「あの口ひげで、ほっぺたくすぐられるのって、ちょっと気持ちよかったもんね」朝子が、なつかしそうな目をした。
「え~、ねえ朝子、それって、けっこう大胆な発言かも」眉美があきれる。
「何で?」朝子は、メロンをほおばりながら首をかしげた。「別にちっとも変じゃないよオ。だってさ、南条さんみたいなお父さんがいたら素敵だなって、皆も思わない?やさしくって、たのもしくって、頭よくって、ケ-キ作りが上手でさ」
「お父さんでもいいし、彼氏だったら、もっといいなあ」
「あたしの彼、ちょっと似てるかもね」眉美がもったいぶって言った。「顔は違うよ、もっとぶさいくだけど、ハヤシライスとか時々作ってくれるもん」
きゃあっと皆がいっせいに、冷やかし半分の叫び声をあげた時、ものすごい風の音が虚空をゆるがすようにせまってきて、建物全体がきしむようにゆれた。

しばらくすると、本当に電灯が消えてしまった。恐さ半分、浮かれた気分半分でキャ-キャ-言いながら少女たちは、ろうそくに火をつけてベッドの上でシ-ツをかぶって、かたまりあった。エアコンの涼しさはまだ残っているが、その内暑くなりそうだと心配した司が、廊下へのドアを開けて見ると、暗い階段を光が右往左往していた。寮委員と宿直室のおばさんたちが、懐中電灯をあちこちのへやに貸し出しているらしい。
「ろうそくは危ないから禁止らしいよ」耳をすましていた司がドアから戻って来て、ひそひそ声で報告する。
「大丈夫だよ。これだけ人がいるんだもん」和子が言った。「いざとなったら、ろうそく消して、まっ暗い中でしゃべりゃいいのさ」
「バラの匂いがして素敵かもしれない」朝子がうれしそうに言う。
「だけど、不思議なもんだよね」しのぶが言った。「ほら───『若草物語』じゃ、外部の飛び入りだけじゃなく、役の入れ替え時々するだろ?あたし、ベスって、もう緑川さんしかいないって思ってた。それこそ、あの役のために生まれてきたような人だって。でも実際にやって見ると、緑川さんて、あんなに弱々しくてきれいなのに、ベスにしては何だか───何だろ───」
「あたしも、それ思った」司がうなずいた。「何でだろうね。何かちがうんだよね」
「妖精みたいで、どっか現実ばなれしてるからじゃない?」眉美が言った。「冷たいってんじゃないけど、ひらひらすきとおってて、年とかとらない感じがするから、病気になったり死んだりしても、何かリアルじゃないんだよ。ベスってもっと、どういうの───平凡で、暖かい感じの人だと思うから」
「だから、いっそ日村さんがやった方がベスに見えるんだよね」和子が言った。「あの人、ほんとにすごいよね。ベスとは何一つ似てない海千山千の大嘘つきなのに、アラミスやってる時なんかの、裏表のあるしたたかな感じが、ちらっとも表に出ないんだもん」
「きっと、演技で割り切ってやってるからなんだろうな」しのぶが言った。「本当の老人には老人の演技はできない、八十才のリア王やるには、五十才ぐらいの若い人でないとパワ-が足りないって言うのと同じで」
「そりゃさ、峯さんのジョ-だって、実際に見るまでは、あたし、太ったジョ-なんて考えたこともなかったけど、峯さんがメガネかけて、すごく知的で空想的な、ちょっとオタクっぽい少女って感じでやると、男の子になりたがる、小説書いてる女の子って、絶対こういうタイプだろうってまで思っちゃうもん」
「あたし、あれ見て真似しようとするんだけど、あたしがやると、ただのデブでバカのジョ-になっちゃうの」朝子が大きなため息をついた。「考えてみたら、峯さんって読書量とかもすごいし、やっぱりそういうのって、にじみ出るんだよねえ」
「朝子のジョ-はジョ-で、かわいいよ」みどりがなぐさめた。「自分の世界に熱中して現実逃避してるみたいなデリケ-トな感じは、峯さんよりも、よく出てる。だから、エイミ-に小説の原稿燃やされてキレちゃうのが、すごくよくわかって同情できる。峯さんだと、ああいう時、何かけっこう、かんらかんらと笑って許しちゃいそうなんだもの」
「あたしがびっくりしたっていうか、ショックうけたのは、美尾さんのエイミ-」司が言った。「上月さんのエイミ-が、ばっちりなのは覚悟してたけど、ほんとに絶対ここだけの話よ、エイミ-の演技に関してだけは、特に子どもの頃の演技だけは、美尾さんに、あたし勝てると思ってた。だって第一、美尾さん、あんなに大きいんだし、白いエプロンなんかつけて出てきたら、滑稽なだけだろうって。なのに、あの人ったら───学校にライム持って行って先生に怒られて帰ってきて、マ-チ夫人にくっついて慰めたがってもらってる時なんて、指なんかくわえちゃって、やるせない目して、ほんとにもう、小さい女の子に見えたもん。後で同じクラスの子の何人もから『あの時の美尾さん、司よりずっと小柄でかわいく見えた』って言われた時には、何かもう、ちょっとでも自信持ってた自分のバカさかげんに、ふとんかぶって泣きたくなった」
「それ、上月さんもだよ」和子が、おかしそうに教えた。「美尾さんのエイミ-見て、舞台の袖で上月さんたら、『あの、バケモノ-っ!』って、こぶし握って地団駄ふんでたもんね」
「でも、美尾さんが小さく見えたっていうのは、南条さんもうまいんだよ」しのぶが言った。「あの、たっぷりしたスカ-トで、美尾さんを包み込むようにして抱き寄せるから───あ、そういえば、あのスカ-ト、銃士隊長のマントをそのまま使ってるんだって、本当?」
「エプロンもね」眉美がうなずく。「『いくら、辛島さんからまきあげた臨時収入があるからって、贅沢はいけないわ。リサイクルは必要よ。このマントだって、またいつ使うかわからないし』って言って、せっせとホックやファスナ-で、二つの劇の衣装に使えるように、作り替えてたもの。一応、自分の分だけだけど、うまく行ったら他の人の衣装でもやって見るって」
「う~ん、あいかわらず主婦の鑑だなあ」
「やだ、そう言えば、もしかしたら、マ-チ夫人の前髪って、トレヴィルさんの口ひげだった?」司が口に手をあてる。「何だか、似てなかった?」
「ちがうよ」和子が手を振って安心させる。「あの口ひげは南条さん、ちゃんとウ-ル用の洗剤で洗って、乾かして、ブラシかけてしまってた。秋の学園祭では、『風と共に去りぬ』をやる予定だから、レット・バトラ-やる人に使ってもらわなくてはって言ってたよ」
「わあ、スカ-レット・オハラ、誰がやるんだろう?」眉美が声をあげた。「奈々さんだろうか?」
「それより、レット・バトラ-は?」みどりも目を輝かせる。「美尾さん?」
「でも、あの人、主役やりたがらないし───那須野さんじゃない?」
「メラニ-は?」
「緑川さん?南条さんかな?日村さんでもいいよね?」
「アシュレ-は?」
「朝倉さん!」
「でも、アシュレ-って、スカ-レットがずうっと恋しつづけるわりには、上品で知的とは言っても、何だかぱっとしない男性でしょう?あたしの考えを言おうか?どんなさえない役でもカッコよくしちゃう美尾さんがアシュレ-をやるの。で、朝倉さんはエレンをやるのよ」
「エレン?それって、誰だっけ?」
「スカ-レットのお母さんよ。完璧な貴婦人で、スカ-レットが理想にしてた人。実際には、スカ-レットはお母さんとは、まるで違う生き方をしちゃうんだけどね。ほらあ、朝倉さんのメグって、何か高貴で清らかすぎない?でも、エレンお母さんだったら、そっくりあのまんまの雰囲気で、いけると思うんだ、もう、ばっちし」
「あ、それじゃ、そのお母さんをあがめまくってる夫───スカ-レットのお父さんの陽気なアイルランド人のジェラルド・オハラは峯さんだ!」
「ぴったり!それでさ───」
ひゅうっと音をたてて、またどこからかうずまいてきた風に、ろうそくの火が大きくゆれて、ドアがばたあんとものすごい音をたてて閉まった。
少女たちは悲鳴をあげて、しがみつきあったが、すぐまた笑い出し、司がドアの方に行った。
「開けとかないと暑いよね」彼女は言った。「椅子で、押さえとく」
「あたしが部屋からドアストッパ-持ってくる」眉美がベッドからすべり下りた。「ついでに、おばさんからの小包も持ってくる。ゼリ-とかチョコレ-トとか、まだいっぱい入ってたし」
「うれし-い、幸せ-!」司が声をあげた。「朝まで皆でしゃべろうね!」
「そういうあんたが、十一時すぎたら、まっ先に、ことんと寝るくせにな」和子がからかう。
「でも、ちょっとラジオつけとこう。台風情報聞いてようや」しのぶが言った。
「そうね」と、みどり。「ひょっと津波でも来て、寮ごと押し流されちゃったりしたら笑えない」
「いいも-ん!」司はうかれている。「こんな楽しい気分のまんま、津波にさらわれて死んじゃったら、あたし満足だも-ん!神さま恨まないも-ん!」
「紅茶で酔っぱらうんだからなあ、司は」しのぶは首を振ってベッドをすべり下り、本棚においてあるラジカセの方に行った。
「そんなこと言ったら、ほんとに津波来るよ、司」朝子は、司をおどかすというよりは心配そうに、そう言った。
「こんばんは、津波で-す!」司はふざけて、シ-ツを広げて、朝子の上からおおいかぶさる。
「やめて~え!」朝子が悲鳴を上げた。
二人がシ-ツの下で、ばたばた暴れている間に、しのぶはラジオのスイッチを入れていた。
「───暴風雨圏内に入り、風はますます激しくなるでしょう」アナウンサ-の声が流れ出して来る。「特に海岸地方では、充分な警戒が必要です───」

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