九条の会関係むなかた九条の会通信・第六号(2006.11.1)

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自分の被爆体験をもとに、悲惨でありながら美しい小説
「夏の花」を書いた、作家の原民喜は、
1950年、朝鮮戦争が勃発した時、鉄道自殺しました。
遺書に抗議のことばはありませんが、
原爆という未曾有の悲劇を味わって、
それが教訓として生かされないまま
再び人間が殺し合いをするのを見た絶望も理由の一つでしょう。

今、北朝鮮がまた新たな「核を持つ国」となった時、
同じ悲しみと怒りと空しさを感じる人は多いでしょう。

けれど、平和憲法を持ち、「軍隊」と正式に呼ばれるものを持たず、
原爆投下後60年を戦争をしなかった、この国の私たちの怒りや悲しみは
深いけれども、まっすぐです。

ユダヤ人虐殺という同じように大きな悲劇を体験したイスラエルは、
戦いつづけることで、その再現を許すまいとしました。
その結果は今も続く泥沼の復讐と戦いの連鎖です。
彼らのとった道も苦しい決断と選択を重ねてでしょうが、
それは今、ともすればホロコーストの悲劇さえもかすませてしまう。

「安らかに眠ってください。あやまちはくりかえしません」という
被爆者への追悼のことばは、卑屈だと攻撃されたこともあります。
けれど、それは当時の人たちの真剣な討論を経て選ばれた表現といいます。
復讐ではなく抗議ではなく、悲劇の再現だけは許すまいとする
それは誓いで、決意でした。

そういう和解と話し合いの道を信ずるからこそ、
それが遠ざかる時の絶望は強く、虚無も深い。
でも、それを感じられることに、それに耐えられることに、
むしろ、誇りを持ちましょう。

核を持たず、戦争をしないと誓ったこの国こそが、
他のどの国にも増して、武力を誇示する国に怒る権利がある。
その権利を私たちは決して手放してはいけません。
未来の加害者になることで、過去の被害者を汚してはなりません。

絶望におちいるのは、まだ早すぎる。
けれどまた、もう無力感にかられている暇もない。
原民喜の味わった思いに、私たちの一人もくずおれることのないよう、
どうかおたがい、元気でいましょう。

教育基本法の講演(ご報告)

10月19日夜、宗像自治会館で、「明日の宗像を考える会」「福教組宗像支部」の主催による、「10.19教育基本法改悪ストップ宗像地区集会」が開かれ、福岡大学人文学部教授の勝山吉章さんが「安倍政権がめざす教育改革を斬る! ―教育基本法「改正案」が現場にもたらすもの― 」の題で講演を行いました。
憲法を考えるにも役に立つ内容が多かったので、お話の一部を紹介します。

「教育基本法改正によって『学校を選べる』と政府は言うが、逆に学校も生徒を選べる。平均点を下げ、学校のお荷物になると判断されるような生徒はどこからも入れてもらえないことになる。入った生徒はまた学校が地域で地方で国で世界でトップになるため、徹底的な競争を強いられる」

「2000年、アメリカのアーミテージが『アメリカとともに戦争できるシステムを日本は作れ」と露骨に言い出した」

「憲法を変えたとしても、国民の心を変えないと意味がない。そこで『国を愛する心』を作ろうとしている」

「『心のノート』はぱっと開いて見た時は別に文句を言うようなことは書いてない。しかし実際には現代版の修身教科書だ」

「教育基本法の改正がめざすのは大きく言って二つしかない。『勝ち組をいかに効率よく作るか』『負け組に文句を言わせずアメリカのために戦わせるか』だ」

「日本のマスコミはブッシュが以前に北朝鮮を核攻撃すると明言したこと、小泉首相の北朝鮮訪問にブッシュが激怒し、以後日本の首相は北朝鮮を訪問できなくなったことなどをまったく触れない、報道しない」

「我々は少数派ではない。パリでもロンドンでも数十万、数百万規模のイラク戦争反対デモが行われている。アメリカ国内でもアフガニスタン攻撃時には数千だったデモがイラク戦争では数万に増えた。先進国では平和運動が大きなうねりとなっている中、東京では2万5千人と少ない。これだけ運動が抑えこまれているのは徹底した情報操作だ。CIAは3000人のエージェントと100億円の予算を日本に送り込んでいると言われている。テレビ番組のスポンサーは勝ち組の大企業だし、ネットでは組織的な書き込みで世論操作が行われる」

「そんな中、10月に『日の丸・君が代』裁判で先生たちが勝訴した。あれは何を教えるか。『戦えば勝つ』ということだ。あの裁判ではたくさんの教育学者も先生たちを支持する証言を熱心に行った。そうやって意見を述べていけば正しいことは認められる。我々は世界全体から見れば圧倒的な多数派なのだ」

勝山先生は「まだまだ言いたいことがある。時間があるならいくらでも話したい」と元気いっぱいで、もどかしげでした。
なお、この先生のお話はむなかた九条の会呼びかけ人の板坂がまとめたもので、内容にまちがいがあったら板坂の責任です。

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