九条の会関係映画「ひまわり」上映のための実行委員会にむけて

二年前の三月に起こった津波の被害、とりわけそれによって生まれた原発事故の被害は、私たちがこれまでの生活や生き方、国の進むべき道を見直す大きな機会でもありました。この不幸な災害をきっかけに、今までとちがった新しい考え方を生み出すことこそが、あの災害や事故で犠牲になった多くの人や生き物への、せめてもの追善であったはずでした。
しかし、その後、政府の対応への不満が自民党をふたたび政権につけ、景気回復の名のもとに格差は広がり弱者は苦しめられ、何よりその被害の実態を見ればどんな選択肢の一つにもなりようがない原発の再稼働に向けて、政府や電力会社や経済界は動き出そうとしています。この信じられない感覚に私は言うべきことばを知りません。
一部の人々の不満や怒りはより弱い者に向けられ、新聞はあまり報道しませんが、東京の新大久保や大坂の鶴橋など、外国籍の人々の多い地域で、在特会という団体が主催して、「韓国人は皆殺せ」などという信じられないプラカードを掲げたデモが何度も行なわれ、参加者は数百人に増えています。
危険な状況にはちがいありません。しかし、その一方で70年安保闘争の頃には想像もできなかった秩序正しさで、特定の組織や団体によらない数万人の原発廃止を訴えるデモが東京では行なわれています。新大久保のデモに対しても一般の人が呼びかけた抗議の署名に3日もしない内に5000人が応えました。ネット社会や戦後の世代は、このような良識と健全さをも、また確実に生み出しているのです。
宗像市でも、今多くの方々が、平和を守り弱者を守ろうとしてゆるやかなつながりを作りつつあります。私たちは皆それぞれに年齢や経済や健康や忙しさ、その他さまざま、大変な状況を抱えていると思います。しかし、その分、経験や工夫、何よりも正しいと信じたことをやっているという誇りと満足があります。助け合い、支え合い、補い合いつつ、おたがいの持っている力を何倍にも増やしましょう。
「ひまわり」は普通の人々の平和な生活が防ぎようもない空からの戦闘機の落下によって破壊される悲劇を描いています。オスプレイが私たちの頭上をいつ飛ぶかもしれない今日、これは決して古い悲劇でも遠い悲劇でもなく、いつ私たちの上にふりかかるかもしれない現実です。その原因となるもの、背景となるものを排除しなければ、私たちの未来もありません。ひとりでも多くの人にこの映画を見てもらうことが、今こそ重要です。そのための力と知恵を出し合おうではありませんか。この町と、子どもたちのためにも。

(むなかた九条の会世話人代表 板坂耀子)

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