九条の会関係テロリストと戦う武器は(「むなかた九条の会2月配布のちらし)

お正月気分もふっ飛ぶような、IS(「イスラム国」)の人質事件の悲しい結末と送られて来る衝撃的な映像の数々は、「こんな連中に対して九条が何の役に立つのか」という疑問、「徹底的に戦って滅ぼすしかない」という怒りや恐怖も生んでいます。
ISは、テロ組織アルカイダの一部がさらに過激化して生まれたもので、アルカイダを生みだしたのはもともと彼らをソ連(ロシア)との戦いに利用しようとしたアメリカでした。
今回の人質事件の解決に去年から民間で努力して現地にも行った中田考氏の話では、ISは「金銭的な余裕がなく武装面では非常に弱い組織、という印象」「停電が常態で電気もろくに通じていないような世界」だそうです。そして「一般の民衆は何を考えているかというと、日本と同じように、政治やイデオロギーに興味をもっている人は非常に少ない。99%の人は何の興味もない」そうです。

今回日本はなぜ標的になったのでしょう。

「僕たちはね、日本がとても好きだった。とても尊敬していたんだよ。日本の技術は世界一だ。日本はあれだけすごい技術と頭脳を持った国なのに、その力を武力の増強や核開発に使わない、すごい国だと評判だった。お金があって、技術があって、それでいて高いモラルのある国。信頼できる国だった。だけど突然、君の国は、アメリカ側にくっついてイスラム社会に牙を剥(む)いた。イラクやアフガンに襲いかかった。僕らはとてもガッカリしたよ」

中村安希の旅行記「インパラの朝」集英社文庫

と、物静かで清々しいパキスタン青年が著者に語ったように、中東でも九条を守って戦争に参加しない日本は好感こそ抱かれていても敵意は持たれていませんでした。
2003年、小泉政権下での自衛隊のイラク派兵以来、それが次第に変化して行きます。
安倍首相の外遊や発言の責任が問われつつありますが、どちらにしても今回のテロ事件は突然起こったことではありません。それは「九条の無力」を示すのではなく、「九条を無力化しようとしてきた結果」を示すものです。

「敵を知り己(おのれ)を知れば百戦危うからず」と言います。テロと徹底的に戦うなら、このような彼らを生みだした状況を知り、私たちの側の弱点や問題点を知らなければなりません。
今「政府や首相を批判するのはテロリストの味方」という空気が生まれているのは、その点で非常に危険です。 批判や疑問や反対意見を認めない世界には、テロと戦う力は決して生まれません。不安と恐怖、憎悪と無知こそがテロの温床で、私たちの国や世界からそれをなくすことこそが、彼らと戦う最強の武器なのですから。(2015.2.6.)

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