九条の会関係東京オリンピックの閉会式を覚えていますか?
あけましておめでとうございます。
東京都知事選のニュースを見ていると、ふと前回(1964年)の東京オリンピックの閉会式を思い出します。
開会式とちがって、それほど華やかな趣向もなく選手の数も少なかった競技場に、式が終わりかけた時、各国の選手が入り乱れていっせいになだれこんで来ました。
今とちがってのんきな時代でした。多分予定にはなかったハプニングだったと思います。中継していたアナウンサーも「私たちはほとんどの選手たちはもう帰国したと思っていました。しかしまだこんなに大勢の選手が残っていたのです」と、とまどいながら興奮気味にしゃべっていました。
まったく統制もないまま無秩序にあらゆる国の選手が楽しげに、踊ったり、たがいの写真をとったり、日本選手を肩車したり、走り回ったり、叫んだりしていました。天皇皇后のおられる席の前に行って最敬礼する者もいました。まだ天皇の戦争責任が議論になったりすることもある時期で、それを見て複雑な思いを抱いた人もいたと思います。私もそうでした。でも同時に、敗戦国だった日本がこのような平和の祭典を懸命な努力で成功させ、世界の選手たちがそのことを心から無邪気に感謝していることも、ひしひしと感じました。
その時も、それ以後も、ミュンヘンでのテロ事件に象徴されるように、オリンピックはまやかしで平和など守れないとよく言われました。けれど私の目に、あの閉会式での、各国の選手が入り乱れて笑いあう情景は今でもあざやかによみがえります。そして、七年後の東京オリンピックが決まっても、新聞やテレビで話題となるのは、景気回復とメダルの数だけなのは、とても淋しい気がします。まだモノクロだったテレビ画面の向こうに私が見た、すべての人類が自由に入り乱れて楽しんでいるあの情景は、幻だったのでしょうか? フィールドの中だけではなく、限られた時間だけでなく、あの情景をすべての世界に広げることをめざして、私たちは歩まなければいけないのではないでしょうか?
七年後のオリンピックを私たちはどんな国の中で迎えるのでしょう? 金もうけが上手な国や多くのメダルが取れる国だけを目指すのではなく、誰もがささやかな暮らしと幸福を手にし、子孫に核のゴミを残さない、世界に紛争の種をばらまかない、「戦争はやめよう、平和を築こう」と世界に向かって力強く語りかけることのできる、そういう国をそれまでにしっかり作って行くために、むなかた九条の会は、今年も皆さんとともに考え、活動していきたいと思います。
2014.1.1.
「むなかた九条の会」世話人代表 板坂耀子(福岡教育大学名誉教授)