九条の会関係むなかた九条の会通信・第九号(2006.11.30)

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福岡教育大学で、教育基本法の勉強会を行います

◇◇新聞やテレビでさえ、「なぜ、そんなに急ぐのか」と不思議がる中、教育基本法は衆院で強行採決され、参院で審議が始まっています。
自民党の造反組の処置についてテレビは連日大きくとりあげ、教育基本法の審議はまたしてもその陰に隠れてほとんど報道されません。

◇◇「なぜ、変えなければいけないのかわからない」「いじめをはじめ、さまざまな問題の責任を学校や教師だけの責任にしてはいけない」などの声も大きくなっています。

◇◇「教育大学では何もしないのですか」「先生たちはどう考えておられるのですか」との質問を町の人から受けることもある中、何人かの教員と学生が集まって、教育基本法の勉強をすることになりました。
今頃「勉強かい!」と思う方もいらっしゃるでしょうが、やはりまず、学び、考えることから始めたいと思います。

12月15日(金)17:30~ 福岡教育大学人文社会講義室

に、お集まり下さい。第一回はテレビ放送のビデオを見ながら「愛国心」について話し合います。
学外の方の参加も歓迎です。

教育基本法の精神を生かしたら、学力は世界一になった。(ただしフィンランドで)

◇◇11月3日、福岡市天神で行われた「憲法フェスタ」で、福岡大学の勝山成章先生は、次のように語りました。

「私の祖母は子守奉公の後、女郎屋に売られた。『あんた学校に行けてよかったなあ』とよく私に言った。
母は師範学校に行きたかったが、戦時中は竹槍の訓練に明け暮れ、その願いは結局かなわなかった。
二人の女性は、貧困と戦争で、学校に行けず人生を狂わされた。
このような過去をふまえて、『すべての国民にゆたかで平等な教育を』の精神で教育基本法は作られた。今度の改定は、それをふみにじるものだ。

改定の理由にされる少年犯罪の増加は嘘だ。1959年が最大で7100件、以後は全体で三分の一、殺人は四分の一に減少している。先生、地域、関係者の努力で、減ってきている。

国を大事にする心も、アンケートによると95%の日本人が日本に生まれてよかったと思っている。これはハンガリーについで世界2位。国を大事に思う人はいっぱいだ。

モラルが低下したというが、阪神大震災の時の住民の秩序を守った行動には、世界が驚いて、気味悪がったほどだ。自分は関西の出身で、関西はどちらかというと日常のモラルは悪いが、それでもそうだった。平和や人権、仲良くすることを教えてがんばってきた地域や先生たちの成果だ。

では、荒れる学校やいじめの原因は何か。
国連がずっと以前から「日本の子どもたちは過度な競争をさせられている」と指摘している。
格差社会の中で、負け組の家庭の子どもは『がんばってどうなる』「努力してどうなる」と感じている。かつての高度経済成長の時のように、『努力すればむくわれる』と大人は子どもたちに言えない。
かつては『世界で一番勉強する子ども』だった日本の子どもは『世界で一番勉強しない子ども』になった。『勉強して何になるの』と彼らは思っている。

改革をするなら、競争をしなくていい、皆が希望を持てる社会にしなくてはいけない。今度の改定はそれとは逆の方向をめざしている。100人の内の1人がエリートになれば、あとの99人は『心の教育』だけしておけばいいという方向だ。

政府の審議会の委員だった三浦朱門氏は『平等な教育はいらない。エリートには金をかける』と述べた。経済界の考えも同じだ。全国一斉学力テストを行い、能力別学級を作っていこうとする。

法律が変われば、どんどん変わる。入学したらすぐクラスをわけ、教科書も別にするようになる。学校選択制で、できる子を集め、全国一斉学力テストとそのシステムが組み合わされる。

生徒が行きたい学校を選べるとなると、生徒を集めるために校長先生は成績を上げなくてはならない。『おまえのおかげで学校が困る』『テストの日には学校に来るな』と出来の悪い生徒は言われるようになる。20年前英国のサッチャー首相が行った教育改革が、今の日本がやろうとしているのと同じで、英国では今そういう状態になっている。金のある子はひっこしをする、先生はテストの成績をあげることのみに夢中で、できる子以外は迷惑と感じ、これは大変な問題になっている。日本は20年遅れて、それを追っかけている。

これでは国民はバラバラになる。子どもだけではなく、大人まで。それを何とかしようとして、愛国心、公共心が強調される。
アメリカも、格差社会の広がりの中、勝ち組は、負け組に文句を言われないか暴動を起こされないかと不安になり、そのために『皆、仲間』とまとまろうとした。負け組に文句を言わせず牙をむかせないために、その不満を公共心や郷土愛のかたちですりかえる。
今回の改正案の教育目標には『態度を養う』とある。これが目標となると、それにみあったカリキュラム、教科書が必要となり、評価し、点数化が必要になる。『態度』は人間の心や性格である。それに国を愛する心85点、30点と点数をつけることになる。ペーパーテストがよくても、態度が悪いと、推薦などはしてもらえない。
子どもたちは、①点とり競争にかり出される、②心に点数をつけられる、ことになり、国連が問題点として指摘したことは更にひどくなる。子どもたちは今以上にひどいことになる。

基本的格差社会では、ごく一部にハイレベルな教育を行って、他は落ちこぼれになる。心までがクラス化し、100人の中の1人になろうとして、子どもたちは必死に点取り競争に走る。

今の教育が悪くなったのは、教育基本法のせいではない。教育基本法の精神がないがしろになったからだ。

現在、世界で学力一位の国はフィンランドだ。実はフィンランドは先の大戦では敗戦国側だった。復興のために教育に力を入れ、モデルにしたのは日本の教育基本法だった。徹底して競争を排除し、切り捨てを許さなかった。その結果が世界第一位の学力を生み、国の発展力はアメリカ以上と言われている。

憲法の精神を生かし、すべての国民が豊かで平等な社会を作ることが今何よりも大切だ。」

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