九条の会関係国が消える恐怖(むなかた九条の会9月チラシ原稿)

(転載、コピーしてお使いになるなら、いくらでもご自由に。)

国が消える恐怖

KBCシネマ北天神で上映していた「ハイドリヒを撃て!」という映画を見てきました。第二次大戦中、ナチスドイツが占領しているチェコスロバキアで、ヒトラーの重要な片腕として残酷な弾圧を行っていた高官ハイドリヒを暗殺しようとする、抵抗運動の人々の話です。

大きな犠牲も出るだろう危険な計画に反対する仲間もいます。しかし、連合国がチェコを同盟国と認めずナチスの占領を許してしまっている中、このような計画を成功させて連合国にアピールしなければ、チェコという国自体がなくなってしまうのではないかという、メンバーの皆の、愛国心と言うには切実すぎる心情もまた、映画からは強く伝わってきました。

私は愛国心ということばには、あまりなじみがなく、使ったこともありません。どちらかというと嫌いかもしれません。でも、この映画を見ていると、自分の国が消えてなくなるかもしれない危険がせまる恐怖や不安を強烈に意識することがなく、愛国心をあまり持たずにいられる幸せをあらためて思いました。

その少し前、小出裕章さんの原発についての講演を聞きました。講演の中で、北朝鮮について、小出さんはこんな風に話しました。
「僕は北朝鮮とは言わないで、正式名称の朝鮮民主主義人民共和国と必ず言うことにしています。もちろんいろいろ問題はあります。しかし、そもそも朝鮮戦争はまだ終結していなくて、朝鮮民主主義人民共和国は、アメリカと停戦協定を結びたいという姿勢を何度も見せているし、それは今でも変わっていない。しかしアメリカは絶対にそれを結ぼうとしない。もし、停戦協定が結ばれてしまったら、東アジアにアメリカの軍隊をおいて日韓と安保体制を作る理由がなくなってしまうからです。この地域に介入し軍隊をおいておくためには、こうして戦争状態を維持しておくことがアメリカの望みなのです。
そうなると、朝鮮民主主義人民共和国としては、常にねらわれ、攻撃される恐れがあるわけだから、それは恐ろしいし警戒せざるを得ない。その結果こうなっているということを私たちは理解しておかなくてはなりません」

そうなのか、と私もあらためて歴史を調べたら、その通りでした。
世界の最強の大国とまだ平和条約が結ばれず、何の安全の保障も与えられていない国。周辺の韓国と日本も全面的に協力する大国の都合ひとつで、いつ消されるか滅ぼされるかわからない不安にさらされ続けている国。
ミサイルの恐怖に心を凍らせる前に、私たちは「朝鮮民主主義人民共和国」の人々の、その緊張と不安におおわれた長い歳月と日常に、わずかでも思いをはせてみるべきではないのでしょうか。(2017.9.5.)

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